画中にある狩野永納の極めから、永徳筆と伝えられてきた。今日なお永徳真筆とするには躊躇せざるを得ないが、桃山絵画ののびやかさを伝える佳品である。
背景を岩山とし、水景を取り巻くようにして、松樹とそこにとまる鷹と白鷹が向かいあっている。金箔地はときに地面となって背後にまわりこみ、金雲となって対象を覆い隠す。舞台にある道具立ての前後関係を整理するとともに、不要なものを隠してモチーフを際立たせている。金雲の外形と松の葉叢が呼応して、画面にリズミカルな横方向の動きを与えているため、画面の遠近感は希薄である。
画面を上下に貫き、横に長く太い枝をのばす樹幹の姿は、同じく永徳筆と伝える《檜図》屏風(東京国立博物館)を想起させるが、永徳真筆であることが疑問視される向きのある同作に比べても、本図は一層の様式化・洗練がすすめられている。両隻の下端に「永徳眞筆 永納之(これ)を證(証)す」とあり、狩野永納(1631-97)が鑑定を行ったことが知れる。彼がその著書『本朝畫史』(延宝六年、1678)で「粗而草(荒く奔放なさま)」と評した永徳の筆法は本図には窺えないが、桃山絵画ののびやかさを伝える佳品である。(執筆者:野口玲一 出典:『芸大美術館所蔵名品展』、東京藝術大学大学美術館、1999年)