八曲一双の片隻には、能を興業中の小屋掛とその門前の茶屋や見せ物小屋、水辺における野外の宴など主として屋外の遊楽を描き、もう片隻には、数寄屋風の宏壮な二階建の邸宅(遊里)に繰り広げられる様々な遊興を中心に描き、蒸風呂の景や舟遊びなどを描き添えている。長い戦乱の世から解放され、平穏な日々を得た人々の悦びが画面に満ち溢れている。屋外の隻に描かれた雪が冠っている遠山を富士山とし、江戸の遊里を描いたとする説が提出されている。鮮烈な彩色と的確な人物描写によって見事に描いた、江戸時代初期の風俗画中の逸品である。