一般に、分厚い剥片(はくへん)を加工して角錐形に仕上げた石器のことを角錐状石器(かくすいじようせっき)と総称する。先端を尖らせたものが多いが、横断面形は三角形や台形状をなすなど変化に富む。そのうち西北九州では、三面を加工して横断面形を三角形に仕上げた細長い槍先形(やりさきがた)のものを特に三稜尖頭器と呼んでいる。主として槍の先端部として狩猟に用いたものと見られる。
弥生時代の石斧(せきふ)生産地として名高い今山遺跡で採集されたこの石器は、横長の分厚い剥片に手を加えた大型品で、先端を5ミリほど欠損しているが、他の出土例と比べても最大級に属する資料である。石材はガラス質安山岩と見られる。
本資料は採集品であるが、同様の石器は姶良(あいら)Tn火山灰層(AT)の上部で発見されることから年代がほぼ明らかである。ATは鹿児島湾奥部の姶良カルデラが約22,000年前に大爆発したときに噴出した広域火山灰であることから、石器の出現は20,000年前頃と推定される。重さ87.1g。【ID Number1990Q02011】
参考文献:『福岡市博物館名品図録』