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花鳥蒔絵螺鈿聖龕(三位一体像) 閉扉時

不明16-17th Century

京都国立博物館

京都国立博物館
京都市, 日本

16世紀半ば以降、ヨーロッパの宣教師や商人が続々と来日した。「南蛮人(なんばんじん)」と呼ばれた彼らは、キリスト教の祭礼具や西洋式の家具に蒔絵を施すよう注文し、本国へ持ち帰ったり他国へ輸出したりした。「南蛮漆器(なんばんしっき)」と呼ばれる輸出漆器である。
 本品はキリスト教の礼拝画を納める壁掛式の龕(がん)。通常、この種の聖龕には取り外し可能な額絵を納めるが、本品では背板の漆面にじかに油絵を描く。父と子と聖霊は単一であるという三位一体説の教義を示すために、同じ顔の3人の男性を描き、それぞれの胸に、父なる神をあらわす太陽、子イエスを示す子羊、聖霊を示す鳩を添える。三位を年齢も相貌も同じ3人の人間で示す図は、ヨーロッパのカトリック界では異端視され、ほとんど描かれなかったが、新大陸のヌエバ・エスパーニャ副王領(メキシコ)では、その視覚的な分かりやすさが認められ17世紀以降大量に描かれたという。メキシコに本図とよく似た図像が伝わることから、本品の油彩画は17世紀以降のメキシコで描かれたと推定される。
 聖龕としてはもっともシンプルな長方形で、上部の破風などもない。黒漆地に金銀の平蒔絵(ひらまきえ)、絵梨地(えなしじ)、螺鈿(らでん)で、扉表には萩(はぎ)と椿に尾長鳥を、扉裏には葡萄唐草を大柄に描く。南蛮漆器に多い螺鈿の幾何学文は一切用いていない。
 シンプルな形と大柄の蒔絵は、フェザーモザイク(の羽根を用いたメキシコ原住民の貼絵)による聖ステファヌス像を納めた聖龕(東京国立博物館蔵)や、プエルトリコで発見された聖龕(太平洋セメント蔵)などと共通する。スペイン船に積まれ、フィリピン経由でメキシコへ渡ったと推定できる稀有な例のひとつである。

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