岩佐又兵衛は、江戸時代に活躍した絵師です。父親は戦国武将の荒木村重で、織田信長への謀反により父を失ってから後は、母方の岩佐姓を名乗りました。土佐派や狩野派を学びましたが、自由な感性で作画し、将軍家や大名に愛顧されるだけでなく、町絵師たちにも影響を与えたことから「浮世又兵衛」とも称されました。人間の表現も個性的で、特に顔を面長でふっくらした豊かな頬に描いたことは際立った特徴です。又兵衛は、三十六歌仙絵を何組か描いていますが、本画冊の歌仙たちは、大胆にデフォルメされた姿態で、個々人が極めて特色ある容貌に描かれています。一連の歌仙絵のなかで最初期の作品であると考えられ、又兵衛の画業のなかでも、最も重要な作品のひとつです。