木華開耶媛(このはなさくやひめ)は、『古事記(こじき)』に登場する、木の華(はな)のように麗(うるわ)しい女神(めがみ)のことである。山を司(つかさど)る大山祇神(おおやまつみのかみ)の娘で、天照大神(あまてらすおおみかみ)の孫である邇邇芸命(ににぎのみこと)の妻となった。嫁いだ木華開耶媛は火照命(ほでりのみこと)(海幸彦(うみさちひこ))火須勢理命(ほすせりのみこと)・火遠理命(ほおりのみこと)(山幸彦(やまさちひこ))を生み、安産の神、美しく花を咲かせる春の女神として人々に愛されてきた。桜・タンポポ・ゼンマイ・ツクシなど春の草花が満開の野に純白の衣を纏(まと)って座った木華開耶媛の姿は、古代の情緒あふれる神秘性と官能性をただよわせている。なお、黒髪に添えられたぶどうの葉は、豊穣を象徴するものである。