有線七宝とはどのように作られているのでしょうか。まずは、銅、銀、陶器などの胎器に下絵を施し、その下絵通りに銀線を植線、そこにガラス質の釉藥を埋め込んで焼成したのち研磨していきます。この見本の胎器には銅が用いられていますが、当時も銅製のものが一番多かったようです。一度に釉藥をたくさん塗ると焼成時に垂れてしまうため、一度に少しずつしか釉藥を入れられず、何度も何度も塗っては焼成、塗っては焼成という行程を繰り返す、大変技術と根気が必要とされる技法です。この製作工程は大変複雑で、当時も説明しにくかったのでしょう。輸出七宝の最盛期だった明治には、花瓶や香炉、香合などの完成品とともに、多くの製作行程見本が海外向けに作られ七宝技術の説明に使われていたようです。この製作見本も当時作られたものの一つです。