「観音霊験記」は、江戸時代後期の観光の流行に応じて、各地の札所の由来を観音の霊験とともに紹介し、同時に名所旧跡の景観を描いた錦絵である。歌川広重2代・歌川豊国3代・歌川国貞の共作による。戯作者万亭応賀(まんていおうが)の文章が書かれることが特徴で、安政5年(1858)から刊行された。日本では西国・秩父・坂東の三観音霊場(百観音)が著名であるが、この絵は秩父三十四観音霊場を紹介したシリーズの一枚。現在の秩父市にある延命山菊水寺を描いている。このシリーズは、江戸時代末期の観音信仰と観光を理解する上で重要である。