ローブ・ア・ラ・フランセーズに見られる縞に花綱の組み合わせは末期ロココ様式のテキスタイル・デザインの典型と言える。袖口からは、アンガジャントと呼ばれるレースがのぞき、この衣装の可憐さに花を添えている。ピンクを主体とした色彩、衿、胸元、前身頃にふんだんに取り付けられたレースとフライフリンジの華麗さからは、当時のフランス王家とそれを取り巻く貴族階級の人々の生活が、目前に迫る革命の足音に気づくことのない、乖離された世界にあったことが伺える。宮中で評判の美人で、いつも誰からもちやほやされている娘。今日は最新のメイクとこれも最新の顎から頭の先まで1mにも及ぶ巨大なプフ・ア・ラ・ピュス(ノミ風)と呼ばれる髪型を結って舞踏会に参加しました。ところが、男たちはこの髪型の彼女とうまく踊る自信がなくて遠くから眺めているだけです。誰かが上手く踊れば、それをまねて踊れるのだか、と男たちは考えています。勇気がないのです。時間は刻々と過ぎ、娘はだんだんイライラが募ってきます。1770年代後半、巨大な髪型は全盛期を迎えます。今見ると奇怪ながら、スカートと髪型が砂時計みたいで、いいバランスを保っているようにも見えます。