上辺を金箔押しの雲で区切り、塀をめぐらした邸内で踊りに興じる群集と邸外で乱闘を繰り広げる様子をいきいきと描いた初期風俗画の優品である。笛や鼓、太鼓の音に合わせて輪になって踊る大勢の男女は鮮やかな着物で着飾り、両手をあげあるいは顔をかくして踊り狂う様子を躍動的に描いている。屋内の一角では十二単衣の婦人が御簾越しに踊りの様子を窺っている。一方、門外では小歌踊りに参加しようとする人々であろうか、多くの男達が争いあい邸内外の状況は対称的な様相を見せる。
金雲には光悦風の書体で隆達節が二十一行にわたって書かれる。隆達節は堺出身の僧の高三隆達(1527-1611)が作った小歌で文禄・慶長期(1592-1614)に流行した。