西欧絵画の新思潮を吸収しつつ、洋画の新展開を求めた昭和初期。三岸好太郎は、この時代の流れを汲み、常に自己の画風を変化させながら、日本の前衛絵画の礎を築いた画家の一人です。本作品は、三岸の31歳という早すぎる死の直前に描かれました。空、海、砂浜、貝殻、顔を隠した裸婦などの形はリズミカルに単純化され、奇妙に明るい色彩で描かれています。砂浜に濃く落ちた影は、照りつける眩い光を物語ります。静寂のみに支配された白日夢の如き光景です。幻想的詩情を湛えた本作品は、晩年の三岸がシュルレアリスム的傾向へと開眼していたことを示す好作例です。