中国人を類型・職業別に分別して表すという、チャイナ・トレード・ペインティングによくみられる風俗画のジャンルは、写真にそのまま受け継がれていった。これはその典型的な例で、ある特定の個人を撮影した肖像写真というより、「中国人」の類型を表している。19世紀中頃以降の中国人写真家による肖像写真では、中国の肖像画の伝統にならって正面を向いて座ったものや、顔の陰影を修正しているものが多いが、ウィリアム・サンダーズらの欧米人写真家の写真では、この作品のように、そうした伝統的な流れは見られない。台に載せられることで強調された婦人の纏足、手に持つ扇子の見せ方などのエキゾチックな演出に、中国人を他者として捉える視線が見受けられる。作者のウィリアム・サンダーズは、上海で最も長く写真館を営業し(1864~87年頃)、1893年には同地で没して、上海写真史に名を残したイギリス人写真家。