今は二曲屏風になっているが、本来は大画面の絵馬として、江戸・芝の愛宕神社に掲げられていた。宋紫石や平賀源内らに薫陶をうけて洋風画家として名声を確立しつつあった司馬江漢(1747~1818)は、全国の社寺に12面の洋風画を奉納し掲示させたが、そのうち現存しているのは本図を含めて2点しかない。屋外に掲示されていたため、損傷や補筆が著しいが、躍動する海波、近景の浜辺から遥か遠くの富士山まで、ダイナミックに視点を誘うことで作り出される広大な空間と爽快な青空など、斬新な表現の数々は充分に看取することができる。款記は「西洋畫士 東都 江漢司馬峻 描寫 S:a.Kookan Ao:18. / 寛政丙辰夏六月二十四日」。
上方に貼付されているのは、大田南畝と中井(董堂)敬義の賛で、この作品がは文化6年(1809)以前に愛宕神社からはずされたあと、書肆青山堂の所有に帰した旨を記している。
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