1983年秋冬から1986年春夏までの数シーズンにわたってたびたび登場した動物シリーズの靴。食事の際にテーブルクロスにこぼしたワインの滲みがネズミの形のようでかわいかったことからヒントを得て、ネズミの靴が作られた。遊び心から始まったこの動物シリーズにいろいろな動物が加わった。尻尾や耳などそれぞれの動物の特徴を捉えてディテールにまでこだわり、ユーモアとアイディアに溢れている。旧来の靴というカテゴリーに捕らわれない独創的なデザインによって、熊谷は靴を履く楽しさを提案した。
熊谷は1970年に渡仏し、1980年代に靴を中心としたデザイン活動で注目された。発想の原点は彼自身の生活の中にあり、絵画、写真、工芸品、時には人の言葉からもそのイメージを広げ、靴を一つのオブジェとしてデザインした。