1972年東京藝術大学大学院工芸科鍛金専攻中退。78年《果樹園─果実の中の木もれ陽、木もれ陽の中の果実》と題して連作を始める。85年筑波国際環境造形シンポジウムで、はじめて作品を木に取り付け、周囲の植栽と呼応しながら増殖する彫刻づくりの契機となる。95年現代日本彫刻展で埼玉県立近代美術館賞受賞。
つるを伸ばし枝葉をつけて成長する植物のように、周囲の植栽や樹木と呼応しながら増 殖・成長するという考え方で、1985年から制作が続けられている作品です。この美術館には96年に収蔵され、レストラン前の植え込みに設置されましたが、その後二度の増殖制作 を経て、大きさも倍以上になり、かたちもずいぶん変化してきました。金属をハンマーで叩いて延ばしかたちを整える鍛金という技法によって、このような造形が可能になったとは驚くばかりです。古いかたちは姿を変え、あるいは裏返しに内部に取り込まれて、複雑な構造を獲得する手助けとなっています。お天気のいい日には近寄って中をのぞいてみてください。大小の穴から射し込む木もれ陽が、内部の胎内のような世界をきらめかせる幸運な一瞬に出会えるかもしれません。
(寸法)
植栽や周囲の環境とともに成長・増殖する立体造形