珠洲市宝立町柏原に残る西方寺1号窯跡(国史跡)は、中世の窯で天井が残る唯一の例です。しかし、この窯は地中を掘り抜いた地下式の窯であり、地上式が一般的な珠洲窯においては、特殊な例となります。おそらく地上式では窯の大型化に限界を感じた陶工たちが、地下に大窯を掘ることで、大量生産を実現しようと試みたのでしょう。しかし立地が悪く水が湧くこの窯では、十分な温度が得られなかったようで、早々に焼成を断念したようです。残っていたすり鉢の形式から、おそらくこの窯が珠洲焼最後の窯とみられます。こうしておよそ400年に渡った珠洲焼の火は、一旦消えることとなりました。