柳川藩主立花家に伝来した「芸州(げいしゅう)武(ぶ)太夫(だゆう)物語(ものがたり)絵巻(えまき)」は、江戸時代中期、稲生(いのう)平(へい)太郎(たろう)という少年が体験した妖怪との三十日間にわたる根競べの話を元にしています。この体験談は、「稲生(いのう)物怪録(もののけろく)」の名で広く知られ、さまざまな形で紹介され、描かれてきました。立花家の絵巻は、江戸時代後期に描かれた全三巻もので、平太郎の体験談を生き生きと表現しています。毎晩のように平太郎の屋敷にあらわれた妖怪たちは恐ろしくありながら、どこか愛嬌も感じさせます。