シッダールタ(釈迦)は母親のマーヤー(摩耶夫人)がルンビニ園の木の枝をつかんだときに、その右脇から生まれたとされる。この作品のように天人が抱きかかえる姿で表現されることも多いが、遠近法がほどこされた豪奢な庭園風景を見ると、その場所がヨーロッパであるかのような錯覚をおぼえる。作者は20世紀前半のスリランカで活躍した画家、彫刻家、グラフィック・デザイナー。1910年代にはコロンボにあるマリガカンダ寺院の仏教壁画を手掛けたが、後にそうした絵画イメージは、実業家ウィリアム・ペドリスによってドイツでリトグラフ印刷され、スリランカ中に広まった。このほか新聞や雑誌の広告デザインにも携わり、商業美術のための学校を設立するなど、スリランカ近代美術の大衆化のみならず、この分野の発展にも大きな足跡を残した。