『日本書紀』は、奈良時代に編纂されたわが国最古の勅撰の正史で、神代から持統天皇までの朝廷に伝わった神話・伝説・記録などを漢文で記録した編年体の史書であり、全体は30巻からなっている。
この2巻は、もと旧三菱財閥の本家・岩崎家に収蔵され「東洋文庫」にある「岩崎文庫」に納められていたことから、一般にこれを「岩崎本」と呼んでいる写本である。「冠位十二階」や「十七条憲法」などの聖徳太子に関わる記事を収録する「推古紀」(巻第二十二)と蘇我蝦夷・入鹿親子の台頭や乙巳の変の記事がある「皇極紀」(巻第二十四)が伝存しており、書写年代は訓点や字すがたから、平安時代10世紀と見られる。
両巻は、本文に朱書の仮名・ヲコト点・声点(平安時代中期)、墨書の仮名・ヲコト点(院政期)という極めて古い時期の訓点が施された『日本書紀』の最古の訓点本、更には室町時代を代表する学者でもあった一条兼良が二度にわたって加点をしているという、国語学上でも非常に重要な訓点資料としてよく知られている。