リー・ダラブーは、非営利のアートスペースを運営するなど、カンボジアの現代美術の振興に努めてきた。この作品は、第3回福岡トリエンナーレのために再制作されたもので、1970年代にポル・ポトによる軍事独裁政権下で伝令として働かされ、収容所で処刑された少年少女の写真14枚と、それとは関係のない少年少女の写真2枚から構成される。肖像写真の間には伝令の指示書15枚が交互に並び、中央のスピーカーからは、ポル・ポト政権が禁止した伝統民謡に革命の詞がつけられた曲などが流れる。一見すると、緊迫した時代をそのまま記録したものに見えるが、作者はそこに異質な要素を介入させることで、記録や歴史が伝える「真実」に疑問を投げかける。