通称「赤富士」とも呼ばれる世界的な名画の一枚。凱風とは南風のことをいう。夏から秋にかけての晴れた早朝に、富士が山全体を赤く染めて輝くことがあるという。大胆にも画面いっぱいに大きくとらえられた富士が、青空を背景にまっ赤に染め上げられていく。北斎もその光景を驚きと感動をもって見つめていたのかもしれない。この「凱風快晴」の大きな特徴のひとつが、富士の山肌に見られる版木の木目である。版木の木目を使い、画面の大きな面積を占め、ぼかしだけでは単調になりかねない富士山容の表現に、空気の流れまでも感じさせる大きな変化を与えている。
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