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松椿蒔絵手箱(阿須賀神社伝来古神宝類のうち)

不明1390

京都国立博物館

京都国立博物館
京都市, 日本

神道では、神の住居である社殿やその調度を一新することが神の生命力を盛りかえすことになると考えられている。周期的に遷宮(せんぐう)をおこない神宝(しんぽう)を新調するのは、そのためである。明徳元年(1390)の奥書をもつ「熊野山新宮神宝目録」(江戸時代の写本、熊野速玉大社蔵)の記述から、本品は天皇、上皇、室町将軍(足利義満(あしかがよしみつ))、諸国の守護らによって熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)(和歌山県)に奉納された手箱13合のうちの1合であることが知られる。熊野速玉大社の摂社(せっしゃ)であった阿須賀神社に古神宝(こしんぽう)として伝わり、近代になってから国有となった。一連の調度のうち、京都国立博物館はほかにも冠箱(かんむりばこ)、御衣箱(おんぞばこ)、笏箱(しゃくばこ)、插鞋箱(そうかいばこ)(くつを入れる箱)、衣架(いか)(衣をかけておく道具)などの蒔絵調度を所蔵する。
 本手箱は二重懸子(かけご)をもち、大きな懸子は錦の内張り、小さな懸子は蒔絵で装飾する。内部には銅製鍍金銀の薫物箱(たきものばこ)、歯黒箱(はぐろばこ)、白粉箱(おしろいばこ)、菊花形皿、鋏(はさみ)、鑷(けぬき)、歯黒筆(はぐろふで)、眉作り、耳掻(みみかき)、髪掻(かみかき)、櫛払(くしはらい)、解櫛(ときぐし)、白磁製の皿、白銅鏡を納め、そのほかに櫛29枚を納めた蒔絵櫛箱をともなう。神々のためにつくられた調度だが、中世貴族の化粧道具を反映する内容と考えていいだろう。
 意匠は、手箱、櫛箱、内容品ともに土坡(どは)に生える松と椿で統一する。常緑樹は、生命力の象徴として奉納品の意匠に好んで用いられた。手箱の外面には、詰梨地(つめなしじ)に金高蒔絵(きんたかまきえ)、研出蒔絵(とぎだしまきえ)、青金金貝(あおきんかながい)、銀鋲(ぎんびょう)といった高度な技法を駆使しており、豪華このうえない化粧道具となっている。

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