歌川広重の代表作である、東京から京都までの昔の巡礼ルートを描いた『東海道五拾三次之内』。第16番目の宿場『由比』の薩埵峠から駿河湾を見下ろす風景を再現した作品。21世紀に蘇る絵のように美しい『薩埵峠』は、雪で半分覆われた富士山を背景に、収穫を待つ熟したみかんや、杏子、新茶など、静岡県の春の美しさを讃えています。人間による風景を管理しようという強靭な試みが、よくある峠の構造補強や絶壁を迂回する高速道路の建設により明らかにされ、また、コンテナ船や、遊覧船、漁船、沿岸の産業の存在は、時間を超越したおだやかな空気の中に現代の工業的な風景を写し出しています。