築地ホテル館は、慶應4年(1868)8月、東京・築地鉄砲洲の外国人居留地に建てられた外国人向けのホテルです。日本初の本格的洋風ホテルで、アメリカ人技術者R.P.ブリジェンスが設計、二代目清水喜助が施工し、建物外壁のなまこ壁や、中央にそびえる四階建ての塔屋などに、日本の伝統技術が生かされました。別名「エドホテル」と称され、優雅な姿から東京の新名所となった築地ホテル館は、新しい時代を象徴する和洋折衷の建物として、数多くの錦絵に描かれました。しかし、完成後わずか4年、明治5年(1872)2月の大火で焼失してしまいます。その鮮明な写真は残存しておらず、錦絵は築地ホテル館の壮麗な全景を伝える貴重な資料となっています。