百年を経た器物には精霊が宿り、人間に害を加える。そんな俗信から、精霊が宿った器物の妖怪を付喪神(つくもがみ)と呼ぶ。室町時代以来の「百鬼夜行(ひゃっきやぎょう)絵巻」には、夜な夜なパレードを繰り広げる恐ろしげな妖怪たちの生き生きとした?姿が描かれる。江戸時代にも彼らは活躍の場を得て、図鑑的な絵巻物や、「百鬼夜行絵巻」のバリエーションが各種制作されている。
ぼんやりと光がともる暗閣の中でうごめく付喪神たち。よく見ると手前の一団は茶釜や水指(みずさし)、茶碗など茶道具の妖怪で、これから茶会でもしようというのか。確かに茶道具には百年以上を経た古いものも数多い。後ろには、燭台や鳥兜(とりかぶと)、琴や琵琶など様々な付喪神が続いている。どれもみな恐ろしいようで可愛いらしく、正座でおじぎをしている茶釜はどこか福助の姿を連想させたりしてユーモラスである。
伊藤若冲(1716~1800)は江戸時代中期に活躍した絵師で、奇想の画家として評価が高い。この作品は若冲真筆と断言はできないものの、数多くの妖怪画の中でも指折りの魅力をもっている。こんな付喪神たちなら一緒にお茶を飲んでも楽しいかもしれない。
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