二十四孝とは中国の有名な24の孝行話のことで、この屏風には一扇に一話ずつ、合計12の故事が描かれている。それぞれは独立した話であるが、画面全体は風景が連続して見えるように配置される。画面上部には各故事に対応した賛が色紙大の料紙に書されて貼り付けられており、惟高妙安(いこうみょうあん)(1480~1567)、仁如集堯(じんにょしゅうぎょう)(1483~1574)、策彦周良(さくげんしゅうりょう)(1501~79)、春沢永恩(しゅんたくえいおん)(1511~74))の4人の五山僧たちが3首ずつ書いている。また仁如集堯の詩文集である『鏤氷集(ろうきょうしゅう)』の記事により、これらは永禄7~9(1564~66)年の頃に着賛されたものと推定され、本作品のおよその制作年代と、本来は24話全てを描いた二双屏風であったことがわかる。
落款(らっかん)や印章はなく、絵の筆者について断定することはできないが、狩野元信(かのうもとのぶ)様式を継承する狩野派正系の優れた絵師であることは疑いなく、力強い筆致や、どこかぎこちない画面構成からして、後に桃山画壇の寵児となる狩野永徳(かのうえいとく)(1543~90)の20歳代前半頃の若描きの可能性もある。
【ID Number1995B00162-163】参考文献:『福岡市博物館名品図録』