沈南蘋風花鳥画の大流行は、緻密な写実性によるところが大きいが、もうひとつ、当時の日本人に喜ばれた理由がある。画題に、音を同じくする字をあてた語呂合(ごろあ)わせによる謎語(めいご)的吉祥性があり、写実性とおめでたい内容を合わせ持っていたのである。本図は、南蘋画の画題の吉祥意味を和解(日本語訳)した『沈南蘋画図百幅』に、「深遠なる皐(沢の意)に鳴候鶴にて御座候。詩経に「鶴鳴于九皐声聞于天」と有之候付、人の徳高きにたとへて候て九皐鳴鶴図と名つけ申候。」と説明されるもので、人の高潔さを讚える寓意画である。款記は「甲戌仲春写得清泉白鶴図 崎水繍江熊斐」、「熊斐」「繍江」「興来」の3印と遊印「第一流」が捺される。