北斎(1760~1849)の大首絵(おおくびえ)美人図の代表的作品。春朗(しゅんろう)落款の時代を過ぎ、画技がとくに充実する、「可候」と名乗っていた時期の作で、日傘(ひがさ)を手にしたお歯黒の武家の妻と、島田髷(まげ)の娘が大きく描かれている。娘は和製と思われる朱塗りの遠目鏡(とおめがね)をのぞいている。「ななくせ」とあるため7枚揃とも考えられるが、他に「ほおずき」と通称される図が知られるにすぎない。「ほおずき」には手鏡が描かれており、新奇なガラス製品をあしらうシリーズものだったのかもしれない。一枚ものの雲母摺(きらず)りは、北斎作では珍しい。
本図は、しかめっ面で遠眼鏡に夢中な娘の「癖」を、母親がたしなめている場面とも解釈されている。ちなみに川柳もたしなんだ北斎は下のような句を詠んでいる。
「皮切りといふ面で見る遠眼鏡」
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