現在の埼玉県越生町にある「黒岩の五大尊」への江戸時代の参詣風景を描いた浮世絵である。現在の東松山市の箭弓稲荷とともに、五大尊は、当時の江戸の人々からの信仰を集めた。この絵には、画面中ほどの遠景に江戸からの旅程が描かれており、画面下方の近景に、当時の有名な歌舞伎役者をモデルにした人物の参詣風景が描かれている。この絵には、同じ構図で細部が異なる別の作品がある。観光の流行にともない開帳日等が変更になったため、描き換えられたのかも知れない。現在の旅行パンフレットと同様の意味を持つ浮世絵だが、江戸時代の観光の在り方を示す資料である。