亜欧堂田善(またはその門人)による多くの銅版画の中で、もっとも人気を博したシリーズが、これらの小形江戸名所図。北斎・国芳などの浮世絵風景版画の構図や、上方の小型銅版画の流行に影響を与えた点でも重要な作品群で、写実性と抽象化が同居する、緩急のメリハリの利いた表現が特徴。現在25種類の図柄が確認されていて、そのうち神戸市立博物館は19種を所蔵している。
本図に描かれているのは、江戸城外堀(神田川)にかかる筋違橋あたりの情景で、遠くに湯島聖堂の大きな屋根が見える。
田善の江戸名所銅版画では最も小型のシリーズ。このシリーズで最も多く数が揃っているものは須賀川の柳沼甚五郎氏蔵のもので、25枚ある。