文亀元年(1501)丹後を訪ねた際のスケッチをもとに描かれた、雪舟最晩年期の大作である。図の中央には天橋立の白砂青松と文殊信仰で名高い智恩寺があらわされ、その上方に阿蘇海を挟んで寺社の林立する府中の町並み、さらにその背後には巨大な山塊と観音霊場である成相寺の伽藍が配されている。一方、橋立の下方には宮津湾が広がり、ちょうどそれを取り囲むように栗田(くんだ)半島の山並みがなだらかに横たわっている。
一見、実景そのままを写し取ったかのようなリアルな雰囲気があるが、実際は山を極端に高くあらわしたり、町並みを長く引き伸ばすなど大幅な変更が試みられている。また、図全体をかなり高所から捉えた構成になっているが、このようにみえる場所自体、実際は存在しないのである。橋立の威容をより効果的にみせるための工夫であったのだろう。筆遣いはいたって荒々しく、まさに一気呵成に仕上げた印象を受けるが、かえってそれが図に独特の躍動感や力強さをもたらしている。