16世紀中期にポルトガルが拠点をマカオに築いて以来、マカオはポルトガルの一地方都市として、また冬期に広州で貿易を行う西洋人の夏期の居留地として栄えた。そして、いち早く西洋の地図にも現れるマカオの風景は、ペンニャの丘から俯瞰する角度や、この作品のように東側から眺望する角度で絵にされている。工芸的な味わいをもつ描写や彩色と、蒸気船や帆船が行き交うにぎやかな光景が異国情緒を一層かきたて、輸出用としての性格を際だたせている。画面右の中程にポルトガル旗を揚げたモンテ砦が描かれ、その左側に1850年に建造された石造りの大会堂が描かれていることから、1850年代から60年代の制作と考えられる。