フランスの画家。浮世絵や仏教美術、ロマネスク彫刻などの影響を受ける。明確な輪郭線と平坦に区分された色彩の使用により、暗示にとんだ画面と装飾性を融合させ、19世紀末におけるフランスの象徴主義や綜合主義の代表的画家として知られている。晩年にはヨーロッパを離れてタヒチに旅立ち、人間存在の意味を鋭く問う作品を描いた。
ゴーギャンは1893-94年にかけて、タヒチ滞在中に描いた油彩画をもとに、集中的に木版画に取り組んでいます。この作品は、《ノア・ノア連作》(94年)という木版画集に収められているうちの一点ですが、ゴーギャン没後の1921年に彼の四男のポーラが、《10の木版画集》として発行したものです。この「死霊は見ている」という主題は、ゴーギャンの関心を強く引いたもののひとつで、同じ主題の油彩画が二点描かれています。タヒチの人々は死霊が闇の中からりん光を放って生きている者を迎えに来ると信じており、タヒチの女性たちは暗闇では眠らないのだと、ゴーギャンは語っています。そこでは生と死の世界は昼と夜のようにひとつながりのものだと考えられています。この作品は、体を丸めて横たわる女性の姿から「胎児の死霊」とも呼ばれます。