ニルーファル・チャマンは、バングラデシュの港湾都市チッタゴンを拠点とする作家で、ベンガル民俗芸術の造形や色使いなどの要素を取り入れた大胆な表現を得意とする。半抽象画が主流を占めるバングラデシュ絵画において、物語性のある具象画や実験的な表現方法を模索してきたチッタゴン美術の特徴を受け継ぐ最後の世代のひとり。この作品は、巨大な結び目が画面いっぱいに描かれる『結ばれるもの』シリーズの一つで、赤と黄という温かな祝いの色を用いることで、人と人とがぬくもりのある関係を結び、強く「結ばれるもの」となることを願ったもの。しかし、厚い木板の画面上部が前面にせり出す立体的な支持体を用いることで、見る者に圧迫感を与え、温かな関係に隠された息苦しさをも示唆している。