輝かしい陽光を受け風にそよぐ草地を描いたように見えるこの作品は、驚くほど厳格にコントロールされた手法で制作されている。まず黄色から濃い緑へのグラデーションができるように下地を塗り重ねる。その上を鉄のワイヤでひっかいて、下地の色によって、まず規則的な格子を、次に草の部分の弧を形づくる。いかなる情緒も主観も入り込む隙のなさそうな手法によりながらも、結果的には、奥行き、動き、光、風、さらには季節感まで表出している。いわば、抽象と具象、理知的な規則と豊かな叙情が自然に結びついているのである。造形への人為的な意志を抑制し、手作業の痕跡を画布の上で集積していく韓国独自の「単色絵画」の手法を発展させながら、この作品では、主観を排し理知に従う営みが、人間を広大な自然や宇宙へと導いていくという、作家の信念も表現されている。