梁彭孫は、李朝時代初期を代表する学者画家の一人で、李朝の代表的画家・安堅に、山水画を学んだといわれています。一般には水墨画の作例が知られていますが、このような本格的な着色の作品は珍しく、本図に見られる鋭い筆致からは、中国南宋院体画をもよく学んだことがわかります。画面上方の詩文によると、馬上の射手は胡族の少女で、雁に向かって矢を射たものの、たちまち可哀想になり、矢よ当らないで、と葛藤する瞬間を描いています。周囲の情景は、淡彩で簡略に描き、物語の焦点となる雁と人馬のみに鮮やかな彩色が施されています。放たれた矢が、雁を射落とすのかどうか、劇的な瞬間の一歩手前で、時は永遠に止まっています。