『ガゼット・デュ・ボン・トン』は20世紀初頭の時代のモードを牽引した重要なモード雑誌。1912年から1925年に『ヴォーグ』に合併するまで発行された。毎号8-10点のファッションプレートとよばれる色鮮やかなステンシル版画やリトグラフがおさめられ、ここに描かれたヴィオネをはじめ、ポワレ、ランバン、ウォルト等当時のトップデザイナーの最新の衣装が紹介された。紙面は、極めて洗練されたレイアウトで構成され、流行の衣装の紹介と併せて、旅行、スポーツ等についての記事も掲載しており、モダンなライフスタイルが提案されている。
この雑誌で、マドレーヌ・ヴィオネの衣装のイラストを担当したのはエルネスト・タヤート(1893-1959)。未来派の作家として活動していたタヤートは、誰でもいつでも着用可能な「ユニバーサルな」服というきわめてラディカルなアイデアをファッションに持ち込む。1921年には、未来派やキュビスムの手法を応用してヴィオネの衣装を描き、他のイラストレーターの作品とは一線を画す、独自のスタイルを打ち出した。