春節(中国暦の正月)をはじめとした祭事に、剪きり紙で作られた動物や草花の飾りは欠かせない。それは中国人の生活に根ざした民俗芸術として今も生き続けている。リュ・シェンジョンのアーティストとしての出発点は、こうした民俗芸術、とりわけ剪り紙や年画にあった。1980年代末からの彼は、それらをインスタレーションという現代的な手法で再生させることで、民俗芸術の枠を超える作品を作り大きく評価された。『○』と『○の負形』は対をなし、赤い紙を剪った際にできる模様の部分(ポジ=○)と残りの部分(ネガ=○の負形)を黒い紙に張り合わせたもの。人型は、中国の民間信仰で、死に瀕した人の魂をこちらの世界に呼び戻す際に使われる人形に基づく。それは、自らの芸術表現で現代社会の病を癒そうとする作者の重要なモチーフである。