ウォルター・リップマンは、アメリカ合衆国の著作家、ジャーナリスト、政治評論家であり、「冷戦」の概念を最初に導入した人々のひとりとして、また、現代における心理学的な意味での「ステレオタイプ」という言葉を生み出し、さらに新聞のコラムや著作、特に1922年に出版された『世論』を通してメディアと民主主義を批評したことで知られている。
リップマンは有力な著作家として、外交問題評議会のフォーリン・アフェアーズに寄稿していたが、編集責任者ハミルトン・フィッシュ・アームストロングの妻とリップマンが関係をもったため、両者は仲違いし、リップマンは評議会を離れた。リップマンは、第一次世界大戦後にウッドロウ・ウィルソンが設けた調査機関にも加わり、調査責任者となった。民主主義におけるジャーナリズムの役割についての彼の見解は、当時ジョン・デューイが著述していた内容とは対照的なものであり、後年リップマン=デューイ論争 と称された。リップマンはピューリッツァー賞を2度受賞しているが、そのひとつはシンジケートを通して多くの新聞に掲載されたコラム「Today and Tomorrow」に対するものであり、もうひとつは1961年におこなったニキータ・フルシチョフへのインタビューに対するものであった。
リップマンは様々な呼称で大いに賞賛されており、20世紀における「最も影響力のあった 」ジャーナリスト、「現代ジャーナリズムの父 」などとも評されている。
マイケル・シャドセンの記すところによれば、ジェームズ・W・ケアリーは、ウォルター・リップマンの著作『世論』を「現代ジャーナリズムを創始した著作 」、「アメリカにおけるメディア研究を創始した著作 」と位置付けていたという。