天皇は行幸に際して輿型の乗物である鳳輦(ほうれん)・葱華輦(そうかれん)・腰輿(ようよ)を用いました。鳳輦は晴儀の行幸(ぎょうこう)、葱華輦は通常の行幸、腰輿は宮中移動や緊急避難などと使い分けられました。 鳳輦は屋形の上に鳳凰(ほうおう)像を立て、葱華輦は屋形の上に葱華形の宝珠を載せることに因んだ名称で、いずれも肩上に担いで移動しました。 腰輿は轅を腰位置で舁いて移動するのに因んだ名称です。 東京国立博物館が所蔵する鳳輦は、孝明天皇が安政2年(1855)に新造内裏(現在の京都御所)に遷幸する際や、明治天皇の東京行幸の際に用いられました。同じく腰輿は、孝明(こうめい)天皇が安政2年の新嘗祭の際に用いられた葱華輦型のものです。 いずれも明治39年(1906)に宮内省式部職より引き継いだもので、現存する天皇の乗り物の貴重な実例であることから、東京国立博物館の歴史において皇室との関係を示す象徴的作品として便殿において公開します。