ヨハネス フェルメールとアントーニ ファン レーウェンフック

ヨハネス フェルメールとアントーニ ファン レーウェンフックという名は、世界的にも有名です。2 人は 1632 年にデルフトで数日違いで洗礼を受け、同じ地域で育ちました。当時のデルフトは、決して大きな街とは言えませんでした。はたして 2 人はお互いを知っていたのでしょうか。
アントーニ ファン レーウェンフックは、1932 年 11 月 4 日、フィリップス アントーニスゾーンとマルガレッタ ベル ファン デン ベルクの息子としてトニス フィリップスゾーンと命名されました。この少年は、現在の東門にほど近いデルフトのレーウェンフック（オランダ語でライオンの門）の隣にある家で育ちました。ファン レーウェンフック（ライオンの角）という名は、ここに由来しているのでしょう。アントーニ ファン レーウェンフックは後にワルモントに移り、そこで中学校に通いました。

デルフトの織物交易
後に「微生物学の父」として名を馳せたファン レーウェンフックは、アムステルダムのスコットランドの布商人であるウィリアム デイヴィッドソンの簿記係として教育を受けました。21 歳の時にレーウェンフックはデルフトに戻り、そこで布商人として独立しました。フェルメールの父親も、シルクサテン（高級絹織物）の織物職人として街の織物交易に積極的に関わっていました。確証はありませんが、2 人の人物は織物を接点として会ったことがあるのかもしれません。

レンズ
ファン レーウェンフックは革新的なレンズを作ったことで知られています。レーウェンフックが製造した顕微鏡は同時代の他のものよりもはるかに優れていました。カメラ オブスクラの発明もあり、レンズ自体には当時の画家も関心を寄せていました。ヨハネス フェルメールがカメラ オブスクラに関与していたとする説もありますが、それを立証するものはありません。もしかすると、フェルメールとファン レーウェンフックはカメラ オブスクラの研究を共同で行っていたかもしれません。

フェルメールのモデル
フェルメールの『地理学者』と『天文学者』の人物のモデルはファン レーウェンフックである可能性があると主張する芸術史家は少なくありません。これは確かに説得力のある見解です。レーウェンフック以上にフェルメールにインスピレーションを与えられる人物は街にいなかったでしょう。一方で、ヤン フェルコーリェの描いたファン レーウェンフックの肖像画はかなり年老いてからのものとはいえ、フェルメールの作品の人物とそれほど似ているとも思えません。ただし、これも憶測の域を出ず、フェルメールの作品で誰がモデルになったのかは誰にもわかりません。

遺産管財人
ヨハネス フェルメールの死後、デルフト市は遺産管財人としてアントーニ ファン レーウェンフックを指名します。債務が算出された結果、フェルメール家には破産が宣告されました。フェルメールの死後とはいえ、これがデルフトの著名な 2 人が確実に関わりを持ったという唯一の証拠です。

フェルメールの遺産管財人としてファン レーウェンフックが指名されたという事実は、2 人が互いに知り合いであった証拠であるという見方も少なくありませんが、これも確実とは言い切れません。実際には、デルフト市がファン レーウェンフックを市民の遺産管財人として指名したのはフェルメールの時が初めてではありませんでした。遺産管財人の指名という事実が、ファン レーウェンフックがフェルメール家の友人としてその役割を果たしたという証拠にはならないのです。いずれにせよファン レーウェンフックは、フェルメールの妻、カタリーナ ボルネスが、負債から作品を守るために母親に『絵画芸術』を譲渡しようとした際に協力しませんでした。ファン レーウェンフックは絵を回収し、1677 年 5 月 15 日に競売にかけました。

世界的に有名な 2 人の人物が、小さなオランダの都市で同時期に青年を過ごしたという事実があると、どうしてもヨハネス フェルメールとアントーニ ファン レーウェンフックが、お互いを知っていたと考えたくなります。多くの美術史家が 2 人の人物の接点について仮説を立ててきました。しかし結局のところ、可能性だけならいくらでもあるのです。
こうした試みは今のところ、理想化した仮説の域を大きく超えてはいません。フェルメールとファン レーウェンフックの関係を確実なものにする証拠は、これまでに見つかっていないのです。