型染めの美をささえる精密な技

伊勢型紙とは
型紙は、和紙を柿渋で貼り合わせたもので、そこへ様々な図柄を彫刻して布地の染色に使用します。江戸小紋、浴衣、型友禅などに使われてきました。型紙には様々な文様が表現されていて、日本のデザインの豊富さやおもしろさ、そして彫刻技術の高さをみることができます。
伊勢型紙の生産地
三重県鈴鹿市の白子・寺家・江島地区は型紙の一大生産地として知られ、この地域で生産される型紙は「伊勢型紙」と呼ばれます。型紙を用いた染色は、江戸時代に大きく発展し、武家の裃に用いられるだけでなく庶民の着物にも取り入れられ浸透しました。1955(昭和30)年には、型紙の職人である型彫、糸入れの6名が「重要無形文化財保持者(人間国宝)」に認定。また、1993(平成5)年には「伊勢型紙技術保存会」が保持団体としての認定を受け、伊勢型紙の技術の継承と発展に尽力しています。
技法と技術の継承
型紙は修行を積んだ職人の手により生まれます。和紙を加工した紙(型地紙)に彫刻刀で彫りぬいていきます。型紙の彫刻技法としては突彫(つきぼり)、錐彫(きりぼり)、縞彫(しまぼり)、道具彫(どうぐぼり)があります。技法ごとに異なる彫刻刀を使います。そうして繊細な文様を彫り出すのです。
突彫
突彫(つきぼり)とは地紙6枚を重ねて四辺をこよりで留めて、刃先を手前から向こうへ押しだすように地紙を彫刻する技法です。特に絵画的な文様に向くとされます。職人がそれぞれ彫刻刀を研ぎながら彫り進めていきます。
錐彫
錐彫(きりぼり)とは半円形の刃先を持つ彫刻刀を使い、型地紙に当てて回転させることで、小さな孔を数多く彫り抜くことで文様を描き出す技法です。1寸(約3㎝)四方に約900個もの孔があるものもあります。穴の大きさや間隔をそろえるなど、単調ですが非常に集中力のいる、難しい技法です。
道具彫
道具彫(どうぐぼり)では刃先が桜や菱形など文様の形に整えられた、特別な彫刻刀を使用します。彫刻刀を垂直に押し当て、一気に文様を彫っていきます。道具のよしあしが、型紙の仕上がりを左右するため、道具づくりにも高い技術が求められます。
縞彫
その名の通り、縞を彫刻するための技法が縞彫(しまぼり)です。引き彫りとも呼びます。彫刻刀を定規に当て、手前に引いて縞柄を彫っていきます。最も細かいものは、一寸(約3cm)幅になんと31本の筋が均等に入ります。これは「極微塵」と呼ばれ、熟練の技術が必要です。
糸入れ
縞彫りの細く長い筋や突彫りで彫り落とされた部分が多い柄では、そのままだと染める時に型紙がよれて、文様がずれる恐れがあります。そこで、2枚に割った型紙の間に糸を柿渋で貼り、型紙を元通り張り合わせて筋を固定します。これを「糸入れ」といいます。 仕上げの作業で、筋の間に息を吹きかけて余分な柿渋を取り除きますが、これは女性の息がよいとされてきました。糸入れに失敗すると、せっかく彫った型紙をだめにしてしまいます。熟練した技術が必要な上、非常に神経をつかう作業です。
型紙と浮世絵
江戸時代の浮世絵には、型紙を用いて染色していたと思われる着物がたびたび描かれています。 たとえば、「小紋三役」と呼ばれた「鮫」「通し」「行儀」は文様の細かさを競い、とくに江戸時代の武士の裃に用いられたといわれています。浮世絵には、武士のほか歌舞伎役者や町人たちの着物にも型染が描かれ、当時広く浸透していたことがうかがえます。
国内外に所蔵される型紙
近年、本格的な型紙の研究がさかんにおこなわれています。国内外の所蔵機関での調査がスタートし、展覧会も開催。また、データベースなどを通じて手軽に見ることもできるようになりました。海外では、19世紀末のヨーロッパで浮世絵とともに型紙は人気を博しており、ヨーロッパの工芸や装飾に影響を与えていたことがわかってきました。 一方、日本国内においても、三重県をはじめ、全国各地に型紙は大切にのこされてきました。型紙を使用した染色がどのように広まり、うけいれられてきたのか。また、地域ごとにどのようなデザインの特徴があったのか。まだまだ調査はつづきます。
立命館大学アート・リサーチセンター 協力:京都女子大学
提供: ストーリー

資料提供: 鈴鹿市Staatliche Kunstsammlungen DresdenTextilemuseum St.Gallen

監修:生田ゆき (三重県立美術館)

テキスト:山本真紗子(日本学術振興会特別研究員)、加茂瑞穂 (立命館大学衣笠総合研究機構ポスト・ドクトラルフェロー

編集:京都女子大学 生活デザイン研究所 橘鷹美咲、渡辺雅子(京都女子大学家政学部生活造形学科)

提供: 全展示アイテム
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