15 周年をお祝いしましょう!

クリムトの黄金時代

この黄金のスタイルは、美術史において永続的な地位を獲得しています

Gustav Klimt(1917) - 作者: Moriz NährAustrian National Library

クリムトの名前を聞くと、金色で彩られた絵が真っ先に思い浮かぶ人は少なくないでしょう。そうした作品はいずれも、1901 年から 1909 年にかけて、いわゆる「黄金時代」に制作されたものです。クリムトが描いた他の作品と比べると、意外なほどその数はわずかです。しかし、黄金時代の作品は紛れもなくクリムトの代名詞となり、美術史において不動の地位を獲得しました。クリムトの「黄金様式」ではほとんどの場合、深淵で寓意的なテーマが表現されています。その多くは、黄金の輝きによって特別な意味を与えられ、それ故に別次元のリアリティに到達しています。

クリムトがそれほど金色に関心を持った理由については推測の域を出ませんが、彫金師だった父親が働く姿を子供の頃に間近で見て、なんらかのインスピレーションを受けた可能性はあります。また 1903 年、ベネチア、ラベンナへと 2 回旅をし、教会や大聖堂で目にした中世の金のモザイクに驚嘆した体験も、大きく影響していると考えられます。

Judith(1901) - 作者: Gustav KlimtBelvedere

「ユディト I」、1901 年

クリムトが金箔を使い始めた頃の作品の一つに、有名な「ユディト」があります。

ユダヤの民を救ったというこの官能的なヒロインは、宝石が散りばめられた金色のチョーカーと、

同じように豪華な金色のベルトを身に着けています。

クリムトは、背景のデザインにも金色をふんだんに使いました。イチジクとブドウの木のモチーフは、アッシリア王センナケリブの宮殿のレリーフを連想させます。

この絵の金色の輝きを強調しているのが、金メッキが施された額縁です。額縁のデザインはクリムトが行い、制作は弟のゲオルクが引き受けました。

Beethoven Frieze - Panel 3(1901) - 作者: Gustav KlimtSecession

クリムトが壁画作品「ベートーヴェン フリーズ」の中で傑出した人間として表現した黄金の騎士。翌 1903 年の作品「黄金の騎士」にも姿を変えて登場しています。

人生は戦いなり(黄金の騎士)(1903/1903) - 作者: グスタフ・クリムト愛知県美術館

「黄金の騎士」、1903 年

全身に鎧をまとい、兜をかぶって槍を手にした黄金の騎士は、黄金の道を一人突き進もうとするかのようです。

荘厳な甲冑と馬具、画面下端に伸びる道に、輝く金箔があしらわれています。

また、背景に生い茂る葉と葉の隙間にも、金箔のきらめきを見つけることができます。

金箔という貴重な素材をふんだんに使うことで、クリムトは、この騎士が歴史的人物であることを強調しています。実際、ルネッサンス初期にベネチアやフィレンツェで作られた騎馬像が騎士のモチーフとなっているのです。

Friends (Water serpants)(1904/1907) - 作者: Gustav KlimtBelvedere

「女ともだち(水蛇 I)」、1904~1907 年

1 年後の 1904 年に制作されたのが、この一風変わった作品です。魚や水草に囲まれて水の中を漂う 2 人の女性が描かれています。

この作品の大きな特徴は、小さめの羊皮紙に描かれている点です。さまざまな形状が多様な色使いで細かく描き込まれていて、さながらグラフィック アートのようです。

こうした表現によって希少な細密画のような雰囲気が生まれていますが、それは画面の一部に高価な素材が用いられているためでもあります。たとえば、女性の長い髪や、穏やかに揺らめく水草には、本物の金が使われています。

なめらかな羊皮紙の上でいつもより一層光り輝く金箔は、この作品が丁寧な手作業の末に完成したことを改めて教えてくれます。

Le tre età(1905) - 作者: Gustav KlimtLa Galleria Nazionale d’Arte Moderna e Contemporanea

「女の三世代」、1905 年

「女の三世代」は、とりわけ大きなキャンバスに描かれた寓意画です。装飾的に使われている金その他の金属が、作品の壮大さを引き立てています。

クリムトはこの作品で、若い母親とその腕に抱かれた幼子、そして老女を並べて描くことにより、人間の誕生と老いという概念を前面に押し出しています。

人物はみな裸で、その周りには、はっきりした色彩の細胞を思わせるさまざまな丸い模様が装飾的に描かれています。中でも老女は、光り輝く小さな丸い要素が密集した金色の空間に囲まれています。

3 人の背景も金属のようにきらめいて見えますが、この部分には白っぽい小さな点が無数に描き入れられています。

背景には、金箔ではなく銀とブロンズの箔が使われています。そのため、冷たい雨が降り注いでいるように見えるのです。

背景に輝く金属を使い、多種多様な装飾的要素を金色で彩ることで、クリムトは「女の三世代」というこの象徴的解釈に神秘的なオーラをまとわせることに成功しました。

Adele Bloch-Bauer I(1903/1907) - 作者: Gustav KlimtNeue Galerie New York

「アデーレ ブロッホ=バウアーの肖像 I」(別名「黄金のアデーレ」)、1903~1907 年

「アデーレ ブロッホ=バウアーの肖像 I」は、クリムトの「黄金時代」を代表する作品の一つです。現在は、ニューヨークの美術館ノイエ ガレリエに収蔵されています。実業家フェルディナント ブロッホ=バウアーの妻アデーレ ブロッホ=バウアー(1881~1925)の肖像画制作に着手したのは 1903 年。同年、クリムトはラベンナに旅しています。しかしながら、この絵を完成させるまでには 4 年の歳月が必要でした。展覧会で初めて公開されたとき、この肖像画は大きな反響を呼びました。特に注目を集めたのは、他に類を見ない素材の使い方です。たとえば、美術評論家のルートヴィヒ ヘヴェジィは「金細工職人のような見事な技巧が生んだ、絵画と工芸の融合」と評しました。

クリムトがこの作品で何種類も描いている装飾的なモチーフには、いくつかの様式の影響が感じられます。

ソファの背もたれとドレスに見られる金色の正方形と円形の模様は、クリムトが当時魅了されていた、ラベンナの壮麗な黄金のモザイク画を思い出して描いたかのようです。

アデーレ ブロッホ=バウアーのドレスを飾る風変わりな三角形の目のモチーフは、古代エジプトの黄金の装飾品を連想させます。一方、ソファの背もたれの繊細な渦巻き模様が、古代ミケーネ文明の美術品にヒントを得ていることは間違いないでしょう。

細かい金箔が使われているまばゆい背景は、日本の屏風や蒔絵を彷彿とさせます。クリムトは日本の美術品に感銘を受け、自分で収集もしていたのです。

最後にもう一点。華やかな金色の画面と対照を成すように、モデルの姿をきわめて写実的に描くことによって、クリムトはビザンチン美術のイコンを想起させようとしたのかもしれません。

The Kiss(1908-1909) - 作者: Gustav KlimtBelvedere

「接吻(恋人たち)」、1908~1909 年

「黄金時代」のもう一つの代表作。それは、ウィーンのベルヴェデーレ宮殿に収められている、今日クリムトの作品の中で最も有名な「接吻(恋人たち)」(1907~1908 年)です。

花が咲き乱れる野原で膝をついている恋人たちは、豪華な黄金のローブをまとっています。金色の背景は、無限に広がる宇宙のようです。

画面右側にも、後光のようにひときわ光り輝く一角があります。キャンバスの上に金箔を重ねていく過程で、クリムトは大いに創意工夫を凝らしています。

前作のアデーレ ブロッホ=バウアーの肖像画と同様にこの作品でも、金色の部分、たとえば恋人たちのローブなどにさまざまな装飾が施されています。ふんだんな黄金の装飾が、この作品の神秘的な雰囲気を演出しているのです。

背景は、細かな砂金と金箔が使われている特殊なデザインです。恋人たちを地上の苦しみから解放し、無限の宇宙へと昇華させるための表現なのかもしれません。

Hope, II(1907 - 1908) - 作者: Gustav KlimtMoMA The Museum of Modern Art

「希望 II」、1907~1908 年

「希望 II」は、「接吻」とちょうど同時期に描かれました。宇宙的なきらめく空間が、この作品でも見られます。「接吻」と同じような背景に描かれているのは、腹部が大きく膨らんだ若い妊婦の姿で表現された「希望」の寓意です。

宇宙を思わせる何もない背景は何かの空間を暗示するわけでもなく、そこには横を向いた女性が描かれています。彼女の足もとに、背中を丸めた数人の女性の姿も見えます。

若い妊婦は、さまざまな色の花の模様で飾られた長いガウンの上に同じく長いマントを羽織っていますが、胸元は露わになっています。

この鮮やかな赤いマントには、金色に輝く楕円形の文様がいくつも印象的に配されています。これらの卵形の模様に金箔を施すことにより、クリムトは、生命の源の象徴として女性の存在意義を強調しているのです。

一方、妊婦の腹部の上の方に顔をのぞかせる骸骨は、生まれ来る命に絶えず付きまとう「死」という脅威を表しています。

Judith II Salomè(1909) - 作者: Gustav KlimtCa' Pesaro - Galleria Internazionale d'Arte Moderna

「ユディト II(サロメ)」、1909 年

1909 年には、クリムトの黄金時代はすでに終わりを迎えています。黄金様式で描かれた最後の作品「ユディト II(サロメ)」は 1909 年に完成し、その直後にベネチアの市立美術館によって買い取られました。

黄金時代初期の作品の一つで、当時大きな反響を呼んだ「ユディト I」の発表から 8 年後、クリムトは再び同じ題材に取り組みます。ただし今度は、聖書の別の登場人物であるサロメも関連付けました。

2 つ目の作品でも、ユディトは官能的な「ファム ファタール」として表現され、物語で知られる残虐な行為の影も消えてはいません。

この作品をエキゾチックに輝かせているのが、いくつもの金色の要素です。たとえば、ドレスや布のバッグの表面を飾るさまざまな形状や、

背景の渦巻き模様といった細かい部分に加え、極端に縦長の画面に合わせて両脇に配された幅広の枠の部分に、金箔が使われています。

Death and Life (First Version)(1910/1911) - 作者: Gustav KlimtLeopold Museum

「死と生」、1910~1911 年、1915 年加筆修正

1909 年以降のクリムトの作品で金箔が用いられたものは、ごくわずかしかありません。その一つが、1910 年から 1911 年にかけて制作された、加筆前の「死と生」です。

この作品は現在、ウィーンのレオポルド美術館に収蔵されています。加筆前の絵は、ある美術雑誌にカラー写真で掲載される形でしか公開されませんでした。

たとえばこのバージョンでは、「生」の集団に見えるバラの木のモチーフに金が施されているのがわかります。

背景は写真では茶色っぽく見えますが、おそらく「接吻」や「希望 II」と同じように金色で描かれていたのではないかと考えられます。

Death and Life(1910/15) - 作者: Gustav KlimtLeopold Museum

理由は未だ謎ですが、クリムトは 1915 年にこの絵の一部に大きく手を入れ、当初金色だった部分をすべて暗い色調に置き換えました。

提供: ストーリー

Text: Österreichische Galerie Belvedere / Franz Smola

© Österreichische Galerie Belvedere

www.belvedere.at

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
もっと見る
関連するテーマ
Klimt vs. Klimt
The Man of Contradictions
テーマを見る

Visual arts に興味をお持ちですか?

パーソナライズされた Culture Weekly で最新情報を入手しましょう

これで準備完了です。

最初の Culture Weekly が今週届きます。

ホーム
発見
プレイ
現在地周辺
お気に入り