カナリア諸島とバレアレス諸島の郷土料理

島という地理的条件下で、海、陸地、天然資源、そして気候によって育まれた島嶼部独自の生産品が発達しました。

Canarian Banana Plant Leavesスペイン王立ガストロノミー学会

スペインの島嶼部の料理は、カナリア諸島にはアメリカ大陸から、バレアレス諸島には外国人統治者によってもたらされた農産物の影響を色濃く受けた独自性を持っています。島という地理的条件下で、海、陸地、天然資源、そして気候によって育まれた島嶼部独自の生産品が発達しました。

Potato Plant in Ifoncheスペイン王立ガストロノミー学会

カナリア諸島

カナリア諸島の場合は、群島とイベリア半島との距離が遠いためつながりが弱く、スペインよりもアフリカに近い独自性を持っています。カナリア諸島の料理と調理法は、シンプルさが特徴的です。アメリカへ向かう船の中継港としての影響から、ジャガイモ、トマト、キビ(トウモロコシ)、バナナなどが多用されています。

"Papas arrugadas con mojo"スペイン王立ガストロノミー学会

実際、カナリア諸島の象徴的な料理の 1 つ「パパス アルガダス」(皮が縮むまで焼いたジャガイモ)には、原産地名称保護認定を持つこの島のジャガイモを使用します。このジャガイモ料理には、カナリア諸島の料理のもう 1 つの名物「モホス」というソースを付けて食べます。一般的な「モホス」の色は赤や緑ですが、コリアンダー、ニンニク、サフランを使ったさまざまなレシピがあります。

"Papas arrugadas con mojo"スペイン王立ガストロノミー学会

カナリア諸島は海に囲まれているため、「モホス」を魚に付けて食べることもあります。最も広く食べられている魚にはフラ、サマ、マダイ、小型のサメ、ビエハ、チェルメなどがあります。たとえば、この島の伝統的な「サンコチョ」(濃いスープ)は、塩漬けの魚とジャガイモ、サツマイモ、「モホス」を添えて食します。

Fish Soup Infusion with Gofio Stew and Cilantro Sauce Gelatinスペイン王立ガストロノミー学会

「ゴフィオ」(ローストした小麦またはトウモロコシの粉)は、カナリア諸島の料理で使用されるもう 1 つの基本的な食材で、地理的表示保護認定を受けています。朝食時に牛乳とともにパンのように食べたり、または人気のある「エスカルドン」(ゴフィオをだし汁と混ぜてやや厚めの生地になるまで練ったもの)のレシピの一部として、通常は魚の鍋料理や肉の煮込みとともに食べたりします。

Canarian Banana Plantスペイン王立ガストロノミー学会

品質の良さで知られるその他のカナリア諸島の生産品としては、原産地名称保護の認定を受けたチーズ(マホレロ、パルメロ、フロール デ グイア)や地理的表示保護認定のバナナで、ユニークで甘くみずみずしい食感は他の品種とは大きく異なります。

Carrots with Mandarins and Nutsスペイン王立ガストロノミー学会

カナリア諸島の生産品については、現地の多くのレストラン経営者が創造性を競い合っています。フェルナンダ フエンテスとアンドレア ベルナルディがジャガイモを疑似トリュフに仕上げた「ナブ」(テネリフェ島)、またはフアン カルロスとヨナタン パドロンが黒いジャガイモを付け合わせとして熟成酢「ガスパチュエロ」(魚のスープ)とともに大理石のように見立てた「エル リンコン デ フアン カルロス」(テネリフェ島)のように、文化間の橋渡しとなることさえあります。

Galician Beef Carpaccioスペイン王立ガストロノミー学会

「バミラ」(グラン カナリア島)ではシチメンチョウと緑のパプリカの煮込みの付け合わせにチリヤシを使用し、「ラ アクアレラ」(グラン カナリア島)ではビネグレット ソースを海藻の「モホ」に、そしてパルメザン チーズの代わりにマホレロ チーズを使用したガリシア風牛のカルパッチョが提供されています。

Greixonera出典: eladerezo.com

バレアレス諸島

バレアレス諸島の料理は、占領された歴史の中でさまざまな影響を受けており、フェニキア人、ギリシア人、英国人、フランス人からのあらゆる影響が残っています。そのためいくつかの共通の要素はあれど、各島の料理はそれぞれ特徴的なものとなっています。

Fried Octopusスペイン王立ガストロノミー学会

イビサ島では、揚げたタコ(パプリカ、ジャガイモ、ニンニク、タマネギ添え)や「茹で魚」が人気ですが、これは 2 つのコースからなり、野菜、ジャガイモ、マイルドなアイオリ ソースを添えたメバルに、そして魚のだしで調理した米が提供されます。これは近くにあるフォーメンテラ島でも人気のあるメニューです。

Flaó出典: eladerezo.com

デザートでは「グレイソネラ」(「エンサイマーダ」というペイストリーで作ったプディングの一種)と「フラオ」(ミントの葉を使ったフレッシュ チーズケーキ)がよく知られています。

Mahón Cheeseスペイン王立ガストロノミー学会

メノルカ島では魚介類も重要で、最も有名な料理の 1 つがロブスターの煮込みです。しかし、島で最も尊重されるのが島独自のマオン チーズです。マオン チーズは原産地名称保護認定を受けており、首都の名前を冠していますが、実際には島全体で生産されています。

Majorcan Black Pigスペイン王立ガストロノミー学会

島では「キショット」(タイムなどのスパイスで香り付けしたモツ料理)や「カーン イ スーラ」(肉とベーコンのソーセージの一種)のような冷たくおいしい肉料理を作るために豚肉を使用します。

"Ensaimada"スペイン王立ガストロノミー学会

バレアレス諸島最大のマヨルカ島は、風味の強い「ソブラサーダ」(スペイン産パプリカや他のスパイスで味付けされた豚の一番いい部位から作るソーセージ)や、「エンサイマーダ」という甘いペイストリーが有名で、どちらも品質認定を受けています。

Tumbetスペイン王立ガストロノミー学会

しかし、島には他にも多くの料理があります。他に人気があるのは「フリト マヨルキン」(豚の赤肉またはラムとパプリカ、ジャガイモの煮込み)、「アロス ブルト」(野菜や肉で作る濃厚な味の濃い米料理)、「トゥンベット」(マヨルカ島の野菜を贅沢に使ったラタトゥーユ)などがあります。

The 4 seasons of Majorcan Almondsスペイン王立ガストロノミー学会

アンドレウ ヘネストラやフェルナンド ペレス アレジャーノなどのシェフは、人気のある自身のレストランで、質素なマヨルカ料理に創造性を加えることに成功しました。たとえば、ヘネストラは、イカの煮込みに子豚の耳を加えた料理などに、調味料として地元のアーモンド(地理的表示保護認定)を加えるといった工夫をこらしました。ペレス アレジャーノは「四季」というデザートに、アーモンドをメインとして使用しています。

Roman-Jewish Artichokes in Garum Cream with Carob Crispsスペイン王立ガストロノミー学会

メノルカ島では、「エス タスト デ ナ シルビア」(スローフードの超有名店)や「モン」などのレストランで、技巧的かつ現代的な料理の中に地産食材を盛り込んだ「ゼロマイル料理」を提供しています。イビザ島では、ダビド レアルテスがプロデュースする「パウ バルバ」や「レ アルト」などで、ほどよい創造性の加えられたマヨルカ島の食事を味わうことのできる 2 つのおすすめのレストランです。

提供: ストーリー

テキスト: シルビア アルタサ氏

画像: ダヴィド デ ルイス氏 / スペインの食とワイン / スペイン貿易投資庁 / レストラン「ナブ」 / レストラン「ラ アクアレラ」 / www.eladerezo.com / レストラン「ザランダ」 / レストラン「Re.Art」

謝辞: ラファエル アンソン氏(スペイン王立ガストロノミー学会代表)、エレーナ ロドリゲス氏(スペイン王立ガストロノミー学会ディレクター)、マリア ガルシア氏およびキャロリーヌ ヴェルイーユ氏(いずれもスペイン王立ガストロノミー学会貢献者)

スペイン王立ガストロノミー学会

この展示は、スペインの食文化について取り上げた Google Arts & Culture とスペイン王立ガストロノミー学会による共同プロジェクトの一部です。

提供: 全展示アイテム
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