来々軒| 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
中国の麺料理が日本に流入し、日本の食文化と融合して生まれた料理がラーメンです。麺、ダシ、タレ、具材、脂/油といった5つの要素を組み合わせることで無限のレシピを生み出すことができ、醤油ラーメン、味噌ラーメン、塩ラーメン、とんこつラーメン、つけ麺など、味やスタイルによってさまざまなバリエーションが存在します。また、日本各地の異なる気候・風土・食文化を反映した「ご当地ラーメン」も魅力の一つでしょう。このように、日本で独自に進化を続けてきたラーメンは、今や海を渡って世界中に広がりつつあります。
味噌ラーメン | 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
ラーメンの起源
ラーメンのルーツは中華麺にあります。15世紀の日本では、すでに現代のラーメンの麺とほぼ同じレシピで作られた「経帯麺」が食べられていた記録があるものの、庶民にまで広がることはありませんでした。
その後1858年、日本は200年余りの鎖国を解き、諸外国と修好通商条約を結び、翌年の1859年に開港を迎えます。これにより多くの外国人が日本に移り住み、海外の食文化が流入する中で、中国の麺料理も本格的に広まっていくこととなりました。
またたび:地元の人や移住者、旅行客で賑わう店先(2019)農林水産省
ラーメン店の誕生
1870年には、横浜で日本初の中国料理店が誕生します。以降、中国料理は長くにわたってコース主体の高級料理でしたが、明治後期ごろから中国人留学生が増えるにつれ、大衆向けの中国料理店も増加していきます。そんな中、1910年に東京・浅草にオープンした「来々軒」は、中国の麺料理と日本の食文化を融合させた最初のラーメン店でした。多い日には、1日で3,000杯を提供したというほど繁盛したそうです。
屋台| 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
屋台から広がるラーメン文化
1923年に発生した関東大震災は、当時ラーメン店が集まっていた東京や横浜に甚大な被害をもたらしました。この震災以降、手軽に始めることができる「屋台」が増えていき、ラーメン店は全国へと散らばっていくことになります。路面店と異なり、多くの屋台はメニュー数を絞るため、ラーメン店の専門店化も進んでいきました。1939年に第二次世界大戦が始まると、多くのラーメン店は閉店を余儀なくされましたが、戦後には中国からの引揚者によって再び屋台が増加し、ラーメンは全国的な人気を得るようになります。
ラーメンのイメージカット | 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
ラーメンを構成する5大要素
ラーメンには決まりきったレシピがありません。しかし、麺、ダシ、タレ、脂/油、具材の5つの要素を組み合わせることによって、ほぼ無限のバリエーションを生み出すことができます。
縮れ麺| 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
麺
製麺方法(縮れ・ストレート・手もみ)、小麦の種類、太さ、加水率(麺に加える水分の割合)、形状などを変化させることによって、オリジナルの麺を作り出すことができます。
煮干し | 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
ダシ
動物素材(豚や鶏)、海鮮素材(昆布や煮干し)、野菜素材(にんにくや玉ねぎ)などを組み合わせることで、独自のダシを取ります。
タレ| 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
タレ
スープに味をつけるもので、調味料と肉や魚介のエキスを凝縮させて作ります。 醤油ダレ、塩ダレ、味噌ダレが一般的です。ダシにタレを合わせることでスープが完成します。
脂/油
ラーメンに欠かせない旨味の1つです。動物性油、植物性油、香味油などがあり、スープが冷めないようにふたをする役割もあります。
尾道ラーメン(2019)出典: 新横浜ラーメン美術館
脂/油
ラーメンに欠かせない旨味の1つです。動物性油、植物性油、香味油などがあり、スープが冷めないようにふたをする役割もあります。
笠岡ラーメン | 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
トッピング| 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
具材
具材に決まりはありませんが、チャーシュー、メンマ、ネギ、次いで煮玉子、のり、キクラゲ、もやし、なると、ほうれん草などが定番です。その他にも、ワンタン、バター、糸唐辛子、挽肉、白髪ネギ、三つ葉、コーン、角煮などを使用します。
醤油ラーメン | 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
タレによる分類
ラーメンの分類方法はいくつかあります。例えば、醤油ダレ、塩ダレ、味噌ダレなど、使われているタレの種類から「醤油ラーメン」「塩ラーメン」「味噌ラーメン」と分類することができます。
とんこつスープ| 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
スープによる分類
スープに特徴があるラーメンは、スープの種類で分類することもできます。豚の骨を白濁するまで煮込んだ「とんこつラーメン」、同様に鶏の骨を煮込んだ「鶏白湯ラーメン」、魚介類を大量に使った「濃厚魚介ラーメン」などがその代表例です。
つけ麺 | 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
スタイルによる分類
スープやタレで分類できないものは、スタイルによって分類することができます。麺とつけダレが分かれている「つけ麺」、スープが入っていない「まぜ麺」、夏の定番として親しまれている「冷やし中華」などは、それぞれの専門店ができるほど浸透しています。
尾道ラーメン(2019)出典: 新横浜ラーメン美術館
ラーメンの郷土性
日本は縦長の島国であるため、四季や風土・気候によって異なった食文化や郷土料理が存在しており、郷土ごとの特色を持ったラーメンは「ご当地ラーメン」と呼ばれています。「新横浜ラーメン博物館」をはじめ、日本には各地にラーメンのテーマパークがあり、飛行機や新幹線に乗らずとも全国のご当地ラーメンを楽しむことができます。
新横浜ラーメン博物館 | 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
札幌ラーメン| 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
札幌ラーメン
北海道の冬の寒さから生まれた、野菜やニンニクのエキスが効いた濃厚なラーメンです。中華鍋でモヤシなどの具材を炒め、スープを注ぐことで一体感が増し、身体を芯から暖めます。麺は中太でコシのある縮れ麺を使用しています。
函館ラーメン| 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
函館ラーメン
北海道の中でも比較的温暖な地域で広まった、あっさりとした塩ラーメンです。チャーシュー、メンマ、刻みネギといった具材や、透明度の高いスープ、中細のストレート麺など、中国から伝わった当初の形をとどめているのが特徴です。
赤湯からみそラーメン | 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
赤湯からみそラーメン
山形県・赤湯の「龍上海」で生まれた、本州初の味噌ラーメンとされています。中央には唐辛子を使った真っ赤な辛味噌が乗り、好みに応じて少しずつ溶かしながら食べます。太く縮れた平打ち麺も特徴の一つです。
横浜ラーメン | 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
横浜ラーメン
中国から伝わった麺料理のスープを醤油で味付けし、独自に進化させていったラーメンです。近年は、濃厚なとんこつ醤油とコシのある太麺を組み合わせた「家系」と呼ばれるスタイルが、その代名詞として全国的な知名度を得ています。
京都ラーメン | 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
京都ラーメン
京都の料理は薄口として知られていますが、ラーメンに関しては濃い口でこってりとした味わいです。豚や鶏をベースにしたスープは、大きく三つの系統に分かれるものの、どれも濃厚でインパクトの強いものとなっています。
徳島ラーメン | 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
徳島ラーメン
徳島は三種類の異なるスープが共存している地域で、いずれもチャーシューの代わりにバラ肉を甘辛く煮込んだ具材と、トッピングの生卵が大きな特徴です。麺は短く、縮れの少ない柔らかいものが使われています。
博多ラーメン| 新横浜ラーメン博物館(2019)出典: Shinyokohama Ramen Museum
博多ラーメン
博多は九州地方を代表する都市で、とんこつを長時間煮込んだスープと、加水率の低いストレート麺を使ったラーメンは、全国的な知名度を誇ります。麺をお代わりできる「替え玉」というシステムを採用しているのも特色です。
協力:
新横浜ラーメン博物館
SAVOR JAPAN
原稿編集: 田中 雄飛 (exwrite)
制作: Skyrocket 株式会社