東京藝術大学正門上野文化の杜
東京藝術大学が舞台の環境改善プロジェクト
「藝大Hedge」は、東京藝術大学上野キャンパスの環境を改善する「藝大の森」プロジェクトの一つとして誕生。東京藝術大学は日本で唯一の国立総合芸術大学であり、1949年(昭和24年)、旧制の東京美術学校と東京音楽学校を統合して設立された。日本を代表する芸術家や教育者、研究者を数多く育成、輩出している。
写真:東京藝術大学正門
東京藝術大学の「奥の細道」上野文化の杜
アイデアはキャンパスの森の再生から生まれた
東京藝術大学のキャンパスには、古くから大切にされてきた森があり、「奥の細道」の愛称で親しまれてきた。2014年(平成26年)2月、この小さな森が大雪に見舞われ、数多くの枝木が折れてしまった。これを機に「奥の細道」を保存林として再生させる「藝大の森」プロジェクトがスタート。そして、さらにキャンパスを生け垣で囲む「藝大Hedge」のアイデアが生まれた。
藝大Hedgeの始まり上野文化の杜
自然豊かな武蔵野台地にある上野
上野は、照葉樹林に囲まれた自然豊かな地域である武蔵野台地の端に位置する。縄文時代から人の営みがあったこの地は、江戸時代は寛永寺の境内になり、明治以降は美術館や博物館、大学が建てられ、文化の集積地となった。一方、海外との交流が盛んになるにつれ、外来種の植物が増え、勢力を拡大していった。そこで「藝大の森」プロジェクトは、もともと上野に生息していた日本の多様な植生を回復し、かつての武蔵野の風景の再生を目指すことになった。
写真:赤レンガ1号館・2号館を彩る「藝大Hedge」の緑
藝大Hedgeヤマブキ上野文化の杜
在来種の苗木を植え付ける
「藝大Hedge」の生け垣に使われている苗木は、常緑樹と落葉樹を合わせて40種を超える。アオキ、クロマツなどの常緑樹、ヤマブキ、モミジなどの落葉樹の若い苗木を密に植え、手入れをしながら成長を待つ。ある程度、成長したところで刈り込みし、徐々に密生させていく。
写真:初夏に鮮やかな黄色の花を咲かせるヤマブキ
藝大Hedgeチョウ上野文化の杜
鉄の柵から緑の生け垣へ
「藝大Hedge」は、大学を囲う老朽化した鉄柵を少しずつ取り除き、柔らかく四季の彩りのある生け垣に変えていく。これまで数十mの長さで生け垣のエリアを区切り、少しずつ植樹の距離を伸ばしてきた。
写真:緑が増えるにつれて、訪れる昆虫の種類も豊かに
藝大Hedgeシモツケ上野文化の杜
季節をめぐる植物の自然な営み
日本では常緑樹の生け垣が多いが、「藝大Hedge」は秋を過ぎると、紅葉したり、落葉したりして、彩り豊かな姿に変わっていく。季節の移り変わりを感じられるのも「藝大Hedge」の魅力である。
写真:シモツケは「枕草子」に登場するなど、昔から日本で愛されてきた落葉低木
藝大Hedge記念プレート上野文化の杜
「藝大Hedge」を支える学内外の協力
「藝大Hedge」の取り組みは、学内外に広く伝えられ、市民ボランティアやクラウドファンディングの協力も得ている。藝大の大学祭「藝祭」でも、保存林や「藝大Hedge」の活動を紹介する「藝大の森」展示を実施。植樹の様子を紹介し、風景画、葉や収穫した実なども展示した。
写真:生け垣の中には、協力に感謝する記念プレートを設置
藝大Hedge冬上野文化の杜
垣根を越えて上野公園を一つの森に
藝大キャンパスが武蔵野の植生で豊かになり、「藝大Hedge」の植物が大学と近隣との垣根を低くすることで、上野公園全体が森としての一体感を持つようになっていく。
写真:冬の試練も乗り越えた植物がたくましく生き残っていく
藝大Hedge動画上野文化の杜
藝大Hedge猫上野文化の杜
提供/上野文化の杜新構想実行委員会
協力/東京藝術大学キャンパスグランドデザイン推進室、東京藝術大学施設課、東京藝術大学デザイン科第5研究室(Design Place)、田瀬理夫(プランタゴ/植栽指導)
撮影/君塚和香(東京藝術大学特任助教)、大河内禎(東京藝術大学正門)
文・構成/角田奈穂子(フィルモアイースト)