スペインからラテンアメリカに浸透したデザート

おいしい料理 3 選 - そのデザートが高い人気を集めるようになった理由とは

作成: Google Arts & Culture

Chocolate with churros Chocolate with churrosAcción Cultural Española, AC/E

スペインと言えば、野菜を中心とした栄養価の高い地中海式の食事法で有名です。その一方で、スペインではどの街も少し散策するだけで、さまざまなケーキ屋やカフェでスイーツが豊富に売られている光景も目につきます。この国の人々は他に類を見ないほど甘いものが好きですが、大西洋の向こう側に位置するラテンアメリカ諸国でも、こうしたデザートが、その地域の活気に満ちた文化の料理に入り込んでいることがわかるでしょう。

では、このようなデザートはどこから生まれたのでしょうか。そして、どのようにしてラテンアメリカで大いに人気を集めるようになったのでしょうか。ここでは、そうした甘いものの魅力の理由を探る旅に出かけてみましょう。スペインの特に有名なデザートを 3 つ取り上げて、それぞれどのようなスイーツであるか、なぜ人気が高まっていったのかを詳しくご紹介します。

チュロス


このスイーツはたいてい、通りで商いをする屋台や露店で売られていて、一日中ずっと食欲をそそる香りを放ち、近くを通る人々を引き付けています。 日常的に食べる人たちもいれば、それぞれの家庭のしきたりに従って祝祭日など食べる日を決めている家族もあり、毎週日曜日の朝食に出したり、寒いクリスマスの日に午後のお茶のお供にしたり、夏のビーチでおやつとして食べたり、楽しみ方はさまざまです。

チュロスは、フルートのような形をした細長いドーナツの一種で、全面に溝が入っていることもあります。このスイーツをとても魅力的なものにしている要素は 2 つあり、1 つは油で揚げてあること、もう 1 つは、できたてのときのカリカリとした食感です。どちらか 1 つの要素しかないチュロスというのはほとんどありえないでしょう。

チュロスの誘惑に抗うことができる人たちはしばしば、所詮は材料が小麦粉と水で作った生地を揚げただけのものにすぎない、と見下します。 その意見も正しいのかもしれませんが、しかし、そうした材料から世界有数のおいしいおやつがいくつも作られているのは事実です。

チュロスはどれも同じというわけではありません。伝統的な細長いものにはギザギザに溝が入っていて、リング状に形作られることもあります。マドリッド、カスティーリャ イ レオン、カスティーリャ ラ マンチャといった地域では、こうしたスイーツをまとめて一般に「チュロス」と呼んでいます。また、アンダルシアには、「テヘリンゴス」や「ヘリンゴス」とも呼ばれる「ポラス」があり、これはもっと太くて中身がそれほど詰まっていません。
このデザートは、ホット チョコレートやミルク入りのコーヒーと合わせるか、単にそのまま砂糖を振りかけて食べると、最もおいしく楽しむことができます。

メキシコでも、おいしいチュロスが昔から作られています。この国のチュロスは、油で揚げてから砂糖とシナモンをまぶしたものです。 実際、メキシコシティには、24 時間営業のチュロス店として有名なEl Moro(1935 年創業)があります。

チュロスのチョコレート添え (Acción Cultura Española, AC/E)

「アロス コン レチェ」(ライス プディング)


スペイン料理を最も象徴するデザートの 1 つで、材料は牛乳、米、砂糖、シナモン、レモンピールなど、だいたいどこのキッチンにも常備されているものを使います。

これは簡単に作れる料理ではありません。調理している間、米がくっついて固まってしまわないように絶えずかき混ぜていなければならないため、たいていは、家族そろって食事を楽しむ週末に供されます。 おそらくそれゆえに、このデザートは、地元の食堂やレストランで、日替わりのおすすめ料理として人気の高いメニューになっているのでしょう。

しかし、このデザートを出す高級料理シェフはほとんどいません。高い評価を得たシェフたちがメニューに取り入れているのは、スペイン北部のアストゥリアスのみです。ライス プディングは、アストゥリアス料理の象徴的な存在なのです。 バターを少し加えることで独特の柔らかさと滑らかさが生まれ、米の粒は口の中でほとんど溶けるように消えていきます。また、仕上げとして表面全体にキャラメルをかけるのも特徴です。

この料理は、ラテンアメリカの数々の国で受け入れられており、それぞれの国で生み出された独自のバリエーションが地元の人たちに愛されています。 たとえばコロンビアでは、すりおろしたココナッツを加えます。 コスタリカの人々は、このデザートを食べると傷心が癒されて元気にその日を過ごせるようになる、と信じています。このプディングはヒスパニック文化に深く浸透していて、2007 年にはベネズエラで「アロス コン レチェ」というメロドラマが放送されたり、それ以前にも 1950 年代にアルゼンチンで同じ名前の映画が上映されたりしたほどです。

Rice Pudding with Scalded Milk from Prendesスペイン王立ガストロノミー学会

アロス コン レチェ (Real Academia de Gastronomía)

「タルタ デ サンティアゴ」(聖ヤコブのケーキ)


フォンダン、何層ものクリーム、シュガー クラフトが主流となった現在も、スペイン北部のガリシアを象徴するデザートがシンプルなスポンジケーキであることは、意外に思われるかもしれませんが、その理由は、食べてみればわかります。

細かなアーモンド パウダー、卵、砂糖が混ざり合って忘れられない味わいを生み出す聖ヤコブのケーキは、シンプルな見かけながら、小さな一切れだけでおいしさが一気に広がり、甘いもの好きを大いに満足させてくれます。
昔は、アーモンドが高価だったことから(ガリシアで栽培されておらず輸入しなければならないため)、聖ヤコブのケーキは上流階級の人々が楽しむデザートでした。それ以来、サンティアゴ デ コンポステーラの街の象徴となっています。

1920 年代に地元のパティシエが、サンティアゴ巡礼の道の終わりを表すものとして、このケーキの表面に聖ヤコブ十字の輪郭を描いて粉砂糖を振りかけることを考え出しました。

今日でもアーモンドは高価なため、ガリシアのパティシエたちは、妙に安く売られている聖ヤコブのケーキには疑いを持っています。商魂たくましい一部の菓子職人が小麦粉やカボチャなどオリジナルのレシピにない材料をアーモンドの代わりに使っている可能性について、彼らは指摘しています。そのため、このケーキについては、念のために、地理的表示保護(PGI: Protected Geographical Indication)の刻印があるかどうかを確認することをおすすめします。

ラテンアメリカには、ガリシア系一世、二世、三世の人々が大勢暮らしているため、地元の食堂やベーカリーでこのデザートが売られているのを目にするのは珍しいことではありません。 たとえば 2011 年、ベネズエラの首都カラカスに 50 年以上住んでいたガリシア出身の銀行員が、退職後に会社を設立し、注文に応じて作るガリシアの食品を提供し始めました。

"Tarta de Santiago" (St. James' Cake)スペイン王立ガストロノミー学会

タルタ デ サンティアゴ (Real Academia de Gastronomía)

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