『ヴァージナルの前に立つ女』

ナショナル ギャラリー(ロンドン)のコレクションより

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

ヴァージナルの前に立つ優雅な服を着た若い女性が、期待を込めたような目でこちらを見ています。

彼女は背中を左の窓に向けており、そこから爽やかな昼の光が差し込んでいます。

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

フェルメールは、壁にかけられた絵の額縁、

床のタイル、

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

手前にある誰もいない椅子、

そして最も重要となる女性のサテンのスカートにあるひだに微妙な光の効果を描き出しました。

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

この絵では部屋の一角しか見えていませんが、壁に描かれた絵画、大理石のタイル張りの床、青と白のデルフト製のタイルが敷き詰められた床は、この室内が裕福なオランダの家であることを示しています。

さらに、蓋の内側に風景が描かれたこのヴァージナルは実に豪華なものです。

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

壁にある絵の 1 つはカードを握ったキューピッドを描いたもので、この絵にさらなる意味を与え、オランダの絵画における音楽と恋愛に共通する関係性を表しています。この図柄は、忠実な愛を暗示する当時人気のあった寓意画に由来しています。

フェルメールの他の多くの作品と同様に、この絵画には日付は残されていません。しかし、絵画の様式および女性の衣装から、これが 1670 年代後期の作品であることがわかります。

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

Window



フェルメールは、左隅に窓がある部屋の隅に 1 人の人物を描く画面構成を好みました。しかしここでは、初期の頃の作品に見られた暖い光が部屋の中に満ちた様子ではなく、

鮮明な白い光が鉛枠の窓から差し込み、白い壁に青い光を落として、

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

サテンのスカートの折り目には鋭い凹凸を、

また、ヴァージナルの上には硬い線を描き出しています。

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

Woman’s face

女性の顔

部屋の中を澄んだ光が照らしていますが、興味深いことに女性は光源に背を向けているため、間接的な薄明かりの中にいるように見えます。フェルメールは、肌の色に緑土色の顔料を使用することで、この光の効果を表現しています。

女性の表情は読み取りにくくなっています。わずかに微笑み、期待を込めたような目でこちらを見ているように感じられます。しかし同時に、彼女はいくぶん控えめで距離を置いているという印象を与えます。

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

Frame

額縁

彫刻が施された金の額縁に見られる、立体的な光の表現については、光の屈折を表すため意図的に厚い斑点で塗られたのだと長い間考えられてきました。しかし、顕微鏡で調べた結果、この効果は絵の具の表面を突き抜けた塊状の粒子によるものであることが明らかになりました。さらに技術的な調査によって、これらの粒子は鉛顔料と油性の結合媒体との間に起きた化学反応によるものであることが確認されました。

Painting-within-paintings 1

画中画 1

楽器の蓋の内側にある険しい風景は、デルフトの芸術家ピーテル フルーネヴェーヘンによる絵画であると特定されました。興味深いことに、壁に描かれた金の額縁の中に見える小さいほうの縦型の風景画も、同じ絵画を元にしたものです。

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

Painting-within-painting 2

画中画 2

背景にある絵には、

トランプのカードあるいは板のようなものを持って自然風景の中に立つキューピッドが描かれています。

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

このモチーフは、オットー ファン フェーンの著名な寓意画集の中の『Only One』と題されたもので、恋愛に対する貞節を賞賛しています。絵画の様式からはセイザル ファン エーフェルディンヘンを彷彿とさせますが、特定されてはいません。1676 年に製作された、フェルメールの未亡人の所有目録に記載されていたキューピッドの絵であるとも考えられます。

同様の絵画は、フェルメールの他の作品(『中断された音楽の稽古』(フリック コレクション、ニューヨーク)や『眠る女』(メトロポリタン美術館、ニューヨーク))にも描かれています。

Tiles

タイル

この部屋には、フェルメールの故郷デルフトにちなんで名付けられた青と白のデルフト タイルが敷き詰められています。この画家が生きていた頃、中国の陶磁器を模した白い陶器を生産する陶器工場は、デルフトを拠点にしていました。それぞれのタイルには、人またはボートが描かれています。

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

さまざまな動きをする小さなキューピッドは、恋愛というこの絵画の隠れたテーマを表しています。

Instrument

楽器

この絵に描かれたヴァージナルは鍵盤が本体の中央よりも右側に位置するミュゼラー型と呼ばれるものです。暖かい音が特徴の楽器です。

フェルメールは、格言をプリントした紙が飾り付けられた一般的なものではなく、絵画で飾られた蓋を持つ特に豪華なモデルを描いています。

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

女性が実際に演奏しているのかどうかは、はっきりとしません。

姿勢だけ見ると、指は動かさずに鍵盤に軽く乗せているだけのように見えます。

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

絵を観る人に答えるため、一時的に演奏を停止したことも考えられます。
オランダの絵画において、音楽はしばしば恋愛と関連付けられます。特にヴァージナルは、純粋な恋愛との関連性を象徴しています。

Chair

椅子

誰もいない手前の椅子には光が差し込み、注意を奪われます。これは観る者を合奏に招き入れ、調和のとれた恋愛の追求に引き込むためでしょうか。

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

青い椅子の張り生地部分に使われた群青の顔料は、時間がたつにつれて鮮やかだった色があせて、椅子の存在感がより強調されています。

Jewellery and costume

宝石と服装
女性は胸元に真珠のネックレスを付けています。

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

流行のドレスは黄色いサテンのスカートで、

青い胴着の肩口はレースで縁取られています。

A Young Woman standing at a Virginal A Young Woman standing at a Virginal(about 1670-2) - 作者: Johannes VermeerThe National Gallery, London

また、肘と肩の部分には赤いリボンが取り付けられています。

高価な楽器と同じく、凝った衣装やアクセサリーは、この絵の主人公が裕福な階級に属していることを表しています。

提供: ストーリー

ナショナル ギャラリーとの共同制作
この展示は、Google フェルメール プロジェクトの一環です。

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
もっと見る
関連するテーマ
フェルメールとの出会い
フェルメールの全作品:7か国に広がる18美術館からの36の絵画
テーマを見る

Visual arts に興味をお持ちですか?

パーソナライズされた Culture Weekly で最新情報を入手しましょう

これで準備完了です。

最初の Culture Weekly が今週届きます。

ホーム
発見
プレイ
現在地周辺
お気に入り