ワンライフ: ドロレス ウエルタ

1960~70 年代の農場労働者運動において、セザール チャベスとともに重要な役割を果たしたラテンアメリカ系女性リーダー

Dolores Huerta, Huelga, Delano CA Grape Strikes, September 24, 1965(1965-09-24) - 作者: Harvey Wilson RichardsSmithsonian's National Portrait Gallery

1930 年生まれのドロレス ウエルタは、セザール チャベス(1927~1993 年)と力を合わせ、農場労働者の過酷な労働条件に世間の注目を向けさせた人物です。農場労働者は 20 世紀を通じて、アメリカで最も低賃金とされる職業の 1 つでした。

毎日長時間の肉体労働を続けても貧困レベル以下の賃金しか受け取れず、収穫期に応じてあちこち移動する不安定な生活を送っていました。

ウエルタとチャベスは、労働者に代わって全国的な連帯を呼びかけました。ウエルタは全米農業労働者組合(UFW)の副代表となり、精力的なピケリーダー、説得力のあるロビイスト、不屈の契約交渉人として、農場労働者の生活を改善するだけでなく、女性の生き方として新たなモデルを提案しました。

Fred Ross and Dolores Huerta(1975) - 作者: Cathy E. MurphySmithsonian's National Portrait Gallery

ドロレス ウエルタがコミュニティ オーガナイザーへと身を転じるきっかけとなったのが、1955 年のフレッド ロス(1910~1992 年)との出会いでした。ロスが創設したコミュニティ サービス組織(CSO)は、米国においてラテン系住民の市民参加を初めて提唱した組織の 1 つです。

ウエルタは、故郷のストックトンに CSO の支部を設立することを志願し、最終的にサクラメントの CSO ロビイストになりました。彼女が CSO で出会ったのが、同僚のオーガナイザーだったセザール チャベスです。

1962 年以降、チャベスとウエルタは CSO を離れ、全米農業労働者協会(NFWA)を設立しました。ロスは、この NFWA のアドバイザーに就任しました。

Dolores Huerta Signing Up Members at the Founding Convention of NFWA(1962-09-30) - 作者: Joseph Francis GuntermanSmithsonian's National Portrait Gallery

全米農業労働者協会(NFWA)は、労働者の権利を擁護し、適正な賃金の支払いを提唱しました。しかし、雇用主からの報復に怯える人々に訴求するため、「組合」という言葉を使うことは避けました。

ウエルタは、ストックトンでハウス ミーティングを開き、メンバーの募集と地域支援体制の構築を進めました。NFWA の副代表にも就任しました。

United Farm Workers AFL-CIO Flag(Unidentified Maker)Smithsonian's National Portrait Gallery

チャベスとウエルタの全米農業労働者協会は、フィリピン系移民のラリー イトリオンが率いる農業労働者組織委員会と合併し、統一農業労働者組織委員会(UFWOC)を結成しました。

NFWA の旗は、赤地に白い丸、その中に黒で鷲のシルエットが描かれています。鷲はアステカ神話に登場する重要な鳥で、このことからも組合支持者の大部分がメキシコをルーツとしていたことがわかります。鷲の上に掲げられている言葉「Huelga」は、スペイ ン語とフィリピン語で「ストライキ」を意味します。

Dolores Huerta with Children at UFW Hall(George Ballis)Smithsonian's National Portrait Gallery

ウエルタは、家族や女性も運動に参加するのが自然だと考え、次のように宣言しました。「人々は貧しいから、家族総出で働いています。それならストライキもピケも、家族みんなで一緒にやりましょう…

私たちの運動は非暴力です。女性が参加することで運動の尊厳も高まります。」彼女はミーティングの最後にここに立ち、11 人の我が子のうち 3 人と一緒に、人間の鎖をつないでフォークソング「De Colores」を歌います。

Dolores Huerta Speaking at a Rally(1974) - 作者: Rudy RodriguezSmithsonian's National Portrait Gallery

雄弁でエネルギッシュな演説家だったウエルタは、組合の広報活動を率い、印刷物、ラジオ、テレビを通じて運動の価値や目的を多くの人々に伝えました。

ピケラインの労働者たちの士気を高めるため、ウエルタはこう叫びました。「¡Sí se puede!(Yes, we can!)」

Date Harvest Negotiations and Lettuce Renewal(1972) - 作者: Unidentified PhotographerSmithsonian's National Portrait Gallery

UFW が支援する労働者はブドウ農場にとどまらず、レタス、ナツメヤシ、レモン、イチゴ農場にも広がりました。

法律の素養がなく契約書も見たことがなかったウエルタは、1 週間かけて契約の事例を勉強し、組合の代表として 1966 年 3 月の Schenley Industries との契約交渉に臨みました。これがブドウ農場の労働者たちにとって、初めて勝利を手にしたストライキとなりました。

ウエルタは、交渉の場における巧みさと粘り強さから「ドラゴン レディー」と呼ばれ、1975 年までに組合の 100 以上の交渉にあたりました。

Huerta Speaking to a Group of Women at an Unknown Location(1972) - 作者: Unidentified PhotographerSmithsonian's National Portrait Gallery

ウエルタは、「女性は家族の世話を最優先すべき」というパラダイムに異議を唱え、女性の労働運動への参加を促進しました。

性差別、育児、セクハラといった問題に懸念の声を上げ、これらを深刻に受け止める必要があると訴えたのです。

これにより、メキシコ系米国人女性やグロリア スタイネムなどの著名フェミニストからも尊敬を集めました。

Dolores Huerta at California Demonstrations(Unidentified photographer)Smithsonian's National Portrait Gallery

アフリカ系アメリカ人の公民権運動と農場労働者の運動に共通していたのは、身体をツールとして社会を変えようとしたことです。

行進、ピケ、ボイコット、座り込みは、困窮した個人が集まって体を張り、社会的不公平を世間に訴えて自らの権利を要求するための行動です。ウエルタはピケのリーダーとして、数多くの活動を率いました。

Dolores Huerta(1999) - 作者: Barbara CarrascoSmithsonian's National Portrait Gallery

UFW でボランティア兼芸術スタッフとして活動していたメキシコ系米国人アーティストのバーバラ カラスコにとって、ウエルタはメンターであり親友でした。

カラスコは、公民権運動のリーダーを称えようとウエルタの肖像画を描きました。この絵は、メキシコ系米国人女性と女性解放運動のパワーを象徴する存在となっています。

N'achetez Pas de raisinsSmithsonian's National Portrait Gallery

UFW のピンバッジ

これらのピンバッジを見ると、組合が多様な民族で構成されていただけでなく、

ブドウ農場のボイコットが国際的な広がりを見せていたことも伺えます。FEW の主な支持者は

メキシコ系米国人とフィリピン人でしたが、

アフリカ系アメリカ人、欧州系アメリカ人、プエルトリコ人、イエメン人などの労働者も含まれていました。

Viva la mujerSmithsonian's National Portrait Gallery

United Farm Workers boycott pin in Arabic(Unidentified Artist)Smithsonian's National Portrait Gallery

Boycott grapes, Viva la causa(Unidentified Artist)Smithsonian's National Portrait Gallery

提供: ストーリー

「ワンライフ: ドロレス ウエルタ」では、1960~70 年代のカリフォルニアで農場労働者の運動を率いたラテンアメリカ系女性リーダーを取り上げました。「ワンライフ」シリーズ、11 回目にして初めてのラテンアメリカ系の女性です。ウエルタは、セザール チャベスと共同で全米農業労働者組合(UFW)を設立し、組合のロビイスト兼契約交渉人として活躍しました。農場労働者の法的な保護とより良い生活水準の実現に大きく貢献しましたが、歴史に埋もれてあまり知られることはありませんでした。

国立博物館での初めての展示によって、彼女の貢献にスポットライトが当たりました。ナショナル ポートレート ギャラリーの展示が行われた 2015 年 7 月 3 日から 2016 年 5 月 15 日は、農場労働者運動のきっかけとなった 1965 年 9 月のブドウ農場ストライキからちょうど 50 周年でした。ギャラリーでの展示について詳しくは、http://npg.si.edu/exhibition/one-life-dolores-huerta をご覧ください。

この展示のキュレーションを手掛けたのは、「Latino Art and History(ラテン女性のアートと歴史)」をはじめ、絵画や彫刻のキュレーターとして活躍するタイーナ カラゴル氏です。

今回の展示「ワンライフ: ドロレス ウエルタ」の実現にあたっては、Latino Initiatives Pool(Smithsonian Latino Center による運営)、Friends of the National Museum of the American Latino、Guenther and Siewchin Sommer Endowment Fund より多大なるご助力をいただきました。ここに感謝申し上げます。

この展示は、Smithsonian Institution Traveling Exhibition Service(SITES)により移動展示用に改編され、「Dolores Huerta: Revolution in the Fields / Revolución en los Campos」というタイトルで公開されています。移動展示会について詳しくは、https://www.sites.si.edu/s/topic/0TO36000000L5OBGA0/dolores-huerta-revolution-in-the-fields-revolucin-en-los-campos をご覧ください。

提供: 全展示アイテム
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