『ヴァージナルの前に座る女』

ナショナル ギャラリー(ロンドン)のコレクションより

A Young Woman seated at a Virginal A Young Woman seated at a Virginal(Johannes Vermeer)The National Gallery, London

部屋の中のやや暗い場所で、ヴァージナルの前に座る若い女性がこちらをまっすぐに見ています。

光は、この絵の左上に描かれたタペストリーの裏に隠れた窓から差し込んでいます。

女性が弾く高価な楽器は大理石を模した塗装がされ、

蓋の内側は牧歌的な景色で装飾が施されています。

弦の間に弓を挟んだヴィオラ ダ ガンバは、左側の前景の床に置かれています。

背景の絵は、ディルク ファン バビューレンの『取り持ち女』(ボストン美術館)で売春宿の場面が描かれているため、音楽と愛という一般的な関連性に留まらない他の意味を暗示しているかもしれません。

様式的な観点から、この絵画はフェルメールの後年の作品だと言われています。この絵は元々、『ヴァージナルの前に立つ女』(同じくナショナル ギャラリー所蔵)と対になっていたことが示唆されています。両方の絵は同じ一反の布からできたキャンバスに描かれていましたが、19 世紀以前のこの作品の出自に対する解釈は異なります。その解釈とは、画家が単にあるテーマのバリエーションを探求したためであると考えられていました。両方の絵画は、1860 年代にフェルメールの作品の再発見に貢献した美術評論家、トレ ビュルガーのコレクションとして収蔵されています。

窓とカーテン

暗い窓と薄暗い部屋は、この絵が夜、もしくは雨戸を閉じた暗い部屋を描いたものであることを示しています。

カーテンの裏にある隠れた光源から差し込む暖かい光が、

手前にあるのヴィオラ ダ ガンバ、

ヴァージナルの前縁、

女性の顔や上半身、

背景の絵の一部を照らしています。

この効果により、こうした要素がテーマとして一体となっています。

女性の顔

薄暗い部屋とは対照的に、この女性の顔は鮮やかに照らし出されています。

彼女は魅惑的な眼差しと微笑でこちらを見ています。

また、白い絵の具で小さな光沢が描かれた唇が目を引きます。

フェルメールは女性の顔を首を飾る真珠のネックレスと、

まるで宝石のような光沢のある巻き髪で取り囲むことで、きらめくように描写しています。

画中画 1

ディルク ファン バビューレンの『取り持ち女』(ボストン美術館)が背景に描かれているため、ヴァージナルを弾く若い女性のふしだらな性格が暗示されているという解釈に結びついています。

フェルメールの義母マーリア ティンスは、同じテーマを描いたディルク ファン バビューレンの絵を所有していました。同様の絵は、フェルメールの別の作品(『合奏』、イザベラ スチュワート ガードナー美術館(ボストン)にて紛失)の背景にも描かれています。

画中画 2

ヴァージナルの蓋の内側に描かれた風景は、デルフトの風景画家、ピーテル ヤンス ファン アッシュの作品であるとされています。フェルメールは、別の絵画(『ギターを弾く女』、ロンドン、ケンウッド ハウス)でも同じ絵に修正を施したものを描いています。この絵は彼が所有していた可能性もありますが、彼の所有目録によると 54 枚の絵画のうち風景画と明記されていたものは 1 作品だけでした。

調和のとれた音楽と牧歌的な風景との伝統的な関係は、楽器の装飾に風景画が頻繁に使用されるということにも表れています。

ヴァージナル

17 世紀の鍵盤楽器は一般的には脚を付けずに製作され、机の上に置くか、あるいは専用のスタンドの上に置いて使用されました。そのため、所有者の希望に応じて楽器の高さを調節することができたのです。

不思議なことに、死去した直後に製作されたフェルメールの所有目録には、楽器は記載されていませんでした。

座っているこの女性は、『ヴァージナルの前に立つ女』(ナショナル ギャラリー、ロンドン)の若い女性よりも快活に見え、

手の位置、

動き出しそうな姿勢、

そして前に立てられた楽譜によってまさに楽器を演奏しているように見えます。

ヴィオラ ダ ガンバ
弾き手のいないこの楽器は、観る者に彼女との合奏に誘い込むように置かれています。

ヴィオラ ダ ガンバはバロック音楽において重要な役割を果たしました。楽曲において調和構造の鍵となる通奏低音を鳴らすために必要だったのです。そのため、この絵は調和のとれた愛を意味するものとして解釈することができます。

さらにこの絵は、1618 年に出されたヤコブ カッツの『Quid Non Sentit Amor』という題名の寓意画からヒントを得て描かれた可能性があります。この寓意画の中では男性がリュートを演奏していますが、もう 1 つの楽器は使われていません。添えられた文章には、「2 人の心が離れていても調和するように、ある楽器の音は他の楽器と共鳴する」という説明があります。

署名について
フェルメールは、女性の頭の横にある壁の目立つ位置に署名「IVMeer(IVM は一続き)」を残しています。この署名は、写実的に描かれた室内から、作者の存在を観る者に主張します。

提供: ストーリー

ナショナル ギャラリーとの共同制作
この展示は、Google フェルメール プロジェクトの一環です。

提供: 全展示アイテム
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